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涼の風吹く放課後 お試し版

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「すまん、まことに勝手なことを言って申し訳ないのだが、君たちには入部は遠慮してもらいたいんだ。」
「ど、どうしてですか? 先輩に失礼なことをしちゃったからですか?」
 涼が食い下がる。
「いや、あれはとっさのことだ。責められない。ただ…。そうだな。君たちはちょっと、線が細すぎる。柔道は、ちょっと危険だ。」
 主将はそう説明するが、明らかに奥歯に物が挟まっている。
「そんなぁ…。」
 納得いかない表情の涼。そりゃそうだろう。最初に主将自身が言ってたことと矛盾してる。
「まぁ、今日は本当に体験に来てくれてありがとう。もっと体格がよくなったら、また来てくれ。それでは、片づけがあるから、君たちは着替えに戻ってくれないか。」
「はい…。」
 涼は納得いかない顔をしながらも、渋々と道場を後にする。
 俺は、主将に一言だけ小声で問いかけた。
「主将、本当は別の問題ですよね…。」
「あ、ああ。これは本人に言いにくいことだが、申し訳ない。部員たちの昂奮ぶりを見ると、秋月君の身の安全を保証できないのだ。入部したら、数日と経たないうちに…。」
「主将でも、抑えきれませんか…。」
 主将は、こくりとうなづいた。率直に言ってくれたのは有り難がったが、やはり涼には説明できることではなかった。道場のすぐ外で待っていた涼が「何を話してたの?」と聞いてくるので、「俺の立ち技のどのあたりが悪いのか聞いてたんだ。」と言ってなんとか誤魔化した。

「まぁ、部活はほかにもあるし。」
 あまり慰めにならない慰めの言葉をかけながら、俺は涼と一緒に下校した。方向は逆だったが、俺は自転車で、涼は徒歩だったので、自転車を押しながらその日はお供でもするように一緒に帰った。柔道部の先輩相手に無茶したことがもちろん、余計な心配の原因ではあったが、おかげで?涼の自宅の場所や、その近所の様子も知ることができた。
「勇、悪いけどお願いしていいかな…?」
 家に着いての別れ際、涼は俺に申し訳なさそうに問いかけてくる。
「涼、そういうのはやめようぜ。」
 涼は、はっとした顔を俺に向ける。俺は涼への言葉を続ける。
「俺たちの間で気とか使うなよ。そりゃ、今日はいろんなことがありすぎたけど、だからこそ、俺らだけは気を使わずなんでも助け合おうぜ。俺もそのうち、涼にイロンナコトをお願いしたいからさ。」