涼の風吹く放課後 お試し版
確かに、一人で頑張れると言っても、頼れるものがなにもないのは心細いし。部活も、あんなことになってしまったし。ここで俺が支えてやらないと、今後の涼の学校生活も心配だ…。
「それだけでもいいなら、できるだけ付き合うよ。もし、できることがあるなら協力するし。とりあえず、涼、明日は週末だから…。」
「え? 何かするの?」
「まず、メガネを買いに行かないか? 涼は、時々離れたものがよく見えてないみたいでちょっと心配だ。それに、アイドルたるもの、普段でも律子さんのような、魅力的なメガネを着けていないとな。」
「え? 一緒に行ってくれるの?」
涼の笑顔が、ぱあっと花開いた。
翌日、俺と涼は駅で待ち合わせて、メガネ店がいくつもある大きな街へと向かった。
「喜んでもらえてるのは嬉しいけど、涼としては、本当に俺と二人でよかったの?」
「うん! もちろんだよ。」
「こんなこと言うのもどうかと思うけど、律子さん、メガネアイドルで有名じゃない。魅力的なメガネのアドバイスがもらえたんじゃないの?」
「それ、絶対にダメ。」
「だ、ダメなんだ。」
「そうだよ。律子ねえちゃんには昔から変なものばかり身につけさせられてるんだよ。メガネでも、赤鼻メガネとか、ピカピカ電球メガネとか、一体どこから持ってくるのかわからないようなものばかり持ってきて、僕で試すんだ。ファッションの研究だ、とか言って。」
「それは…酷いな。」
「酷いよね! メガネばかりじゃなく、ステージ衣裳とかも平気で僕に着せるんだ。律子ねえちゃんとは背格好も結構違うのに。」
問題にすべき点が違う気がするぞ…。女装には抵抗ないのか? つい、そちらの方へ水を向けてみる。
「スカートとかも着させられるのか?」
「うん…。下着が見えるようなミニスカートでも平気で僕に着ろと言うんだ。僕、どんな下着を着けてそんなの着ればいいんだよ?」
ぐっ。いかん、俺の下半身が反応しかけた。想像するな、抑えろ、抑えろ…。
「男扱いしてくれないわけか。」
「だから、できるだけ律子ねえちゃんには頼りたくないんだ。」
「なるほど、わかった気がする…。」
「というわけで、今日は勇が選んでくれよ。」
「え? 俺が?」
「そう。男性アイドルとしてもばっちりなメガネ!」
「そ、そうか…。まぁ、頑張ってみるよ…。」
見つかりそうな気がしないけどな…。
作品名:涼の風吹く放課後 お試し版 作家名:みにもみ。