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涼の風吹く放課後 お試し版

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「そうか、なら頑張ってみる。じゃあ、俺はこれから脚本探しに図書室に行ってくる。」
「あっ、僕も行くよ。」
 ようやく食べ終わった弁当箱を、急いでを片づけようとする涼。
 二人して図書室で本を探したりしていたら、またからかわれそうだけど、本当に涼はそういうことを気にしようとしない。
「後からゆっくり来ればいいよ。そんなにすぐ見つかるわけがないし。」
 そう言い残して、一人先に図書室に向かった。

「まずは早速、文化祭での演劇について決めますが、まずは監督と脚本を決めたいと思います。」
 担任がそう切り出すやいなや、俺は早速手を挙げる。
「先生、俺と秋月が監督と脚本をやります。」
 クラス中から「えぇ〜?」という声が沸き立つ。担任が「静かに、静かに」と呼びかけるが、「涼ちゃんはヒロインをやるべきだよ〜」なんていう声が止もうとしない。業を煮やした担任が騒がしいクラスの雰囲気を制する。
「はい、意見がある人は挙手で。秋月くんに女性役をさせたいという声もあるようだけど、そう思う人はそれをちゃんと演劇に出来る監督・脚本に立候補してください。」
 クラスは静まってしまう。それはそうだ。自分からクラス劇を張り切ってやろうという物好きはそうそういない。
「じゃあ、立花くんと秋月くんが監督と脚本ね。脚本は決めてあるの?」
「はい、この『カリブの海賊』をやろうと思っています。」
 俺は、図書室で借りた本を差し出す。主役の男が男らしくヒロインを守って戦う、そんな演劇がいいという涼の希望に合わせて、これを選んでみた。
「あら、面白そう。じゃあ、クラスのみんなも協力して作っていきましょうね。」
 担任の信任を得たことで、すんなりと俺の計画は実現した。もっとも、作業はここからだ。
 まずヒロインにクラスきってのボディを誇る田中さん、次に主役が背の高さで舞台栄えのする斉藤君、そして海賊のキャプテンの役にクラスのムードメーカー役の助川君と、配役は結構すんなり決まった。涼を監督に据えてしまったことで、クラスの懸念材料が一気に解決してしまったようだ。主役をつとめる女子にしても、涼さえいなければクラスでトップのお姫様ポジションということになるわけで、悪い気がしないわけがないし、それを相手する主役にしても同様だ。