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涼の風吹く放課後 お試し版

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「いや、田中さんの怪我の具合だと舞台に立つのも厳しいよ。ましてヒロイン役では、いくらアクションをなくしても…。代役を立てるしかないと思う…。」
 涼が弱り切った顔でこう答えた。
「今から演技指導し直しになるから、それは時間的に無理だ。」
「じゃあ、どうしたら…。」
 こうして俺と涼が悩んでいると、これまで黙っていた担任が初めて口をはさんだ。これまで、放課後の稽古に付き合ってくれたりしていたが、内容に口を出すことはなかった。
「ヒロイン役なら、一人、候補がいるじゃない。」
「……、もしかして、先生、とか?」
 一応、お約束のボケを入れてみる。
「そんなわけないでしょ。」
 やっぱり、あまり冗談の通じない先生だ。
「田中さんを除いたクラスの中で、一番ヒロイン役を理解しているのは、誰?」
 涼が、びくっ、と全身をこわばらせる。先生、あなたまでまさかそんなことを…。
「秋月くん、本当は女の子を演じたくないという気持ちはわかるわ。だから、無理にとは言わない。だけど、今まで私が見てきた限りから考えると、劇の内容の変更なしに完成させるには、あなた以外の代役は考えられないわね。もちろん、無理にとは言わないし、秋月くんが選ぶことよ。」
 担任は、あくまで優しく涼に語りかけた。酷なようだが、確かに涼の選択に委ねるしかなかった。監督は涼だし、劇を作り上げてきたのも涼だ。これを捨て去るのも形にするのも、涼が判断すべきだ。とはいえ、涼がどう判断するかも、また、明白だった。
「わかりました。クラスのみんなが嫌じゃなければ、僕がやります。」
 そう、涼が言うと、クラス中から一斉に声が上がる。
「嫌な奴なんているわけないって!」
「待ってました、俺たちの涼姫!」
「これで賞は間違いないぜ!」
 クラス中が拍手と喝采に包まれる中で、涼は、まんざらでもなさそうな苦笑を浮かべていたのが救いだった。

 大急ぎで衣裳の手直しを女子のクラスメイトにしてもらうことになり、家庭科室の中で涼一人が女子生徒たちの手で下着姿に剥かれて採寸されたり試着したりを繰り返していた。剥かれているのは涼だけなのに、何故か、女子たちは男子の立ち入りを禁止にした。しかし、「や〜だ〜」「そんなとこまで、めくっちゃだめぇ!」という涼の声だけが外に漏れる状況は、かえって男子学生達の劣情をそそっていた。