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涼の風吹く放課後 お試し版

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 そんな突貫工事でなんとか急場をしのぎ、通し稽古も済ませ、文化祭への準備は万端整った。いくら演技指導をしてきて内容をよく理解していたとはいえ、通し稽古一回だけでほぼ完璧に演じてしまう涼は、さすがとしか言いようがなかった。プロであることを知っている俺でも、驚くほかない。

 通し稽古を行った日は、涼も事務所に行く用事がなく、久し振りに二人で下校した。涼と俺は、いろんなセリフを繰り返し、語り合いながら歩いた。
 しばらく話したところで、涼の携帯電話が鳴った。
「はい、涼です。はい、はい、はい…。わかりました。土曜の午後からなら、問題ありません。はい。それもOKです、はい、一応…。ええ、心配いらないです。それでは、よろしくお願いします。」
 涼が電話を切る。
「事務所からの電話?」
「うん。今週末から、ドラマの撮影が入るって。」
「そうなんだ。頑張れよ。」
「うん…。ただ、一つ自信がないことがあってね。」
「どんなこと?」
「脚本読んだんだけど、どうやら、キスシーンがあるみたいで…。」
 キスシーン?!
「そ、それは、相手は…。」
「もちろん、男性の俳優…。」
 涼は、肩を落として答える。
「それ、事務所的には…。」
「事務所的にはもう、OKもOK、キス以上までやっても大丈夫、だってさ。」
 なんなんだそりゃ。
「えっと、事務所的には、涼をどういう方向性で売ろうとしてるんだ?」
「一応、聞けば清純派女性アイドルだって答えるんだけど…。どうも、やらされる内容との差を感じるんだよね…。」
 うーん、騙されてるような、そうでもないような…。
「まぁ、でも今どきはそういうもんかもしれないし。」
「そうなんだけどね…。ただ、やっぱり僕の中では、抵抗があるというか…。」
「僕らの演劇みたいに、キスしてるフリじゃないんだ。」
 今回の演劇のラストシーンは、主人公とヒロインのキスシーンになっている。
「いまどきのドラマで、疑似のキスシーンなんて有り得ないって言われちゃった。」
「そうか…。ひょっとして、キスの経験は?」
「あーあー、はいはい、ないですよ。悪かったなぁ。」
「いや、別に悪いとは言ってないんだけど、そうか、そりゃ、ショックかもしれないな…。」
「あぅあー。今から好きな女の子作ってキスするなんて、無茶な話だよなぁ…。もう逃れられないのかなぁ。」