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さらば青春、そしておかえり!

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 「っていうか元同級生のよしみでいうけどさ、いくら高層マンションだからって窓全開はよくないと思うんだよね。最近じゃあ高層だからってその安心感の隙を狙ってくるのが多いし。まぁさっきの君みたいなのをみたら泥棒も尻尾まいて逃げるだろうけどさぁ。・・・いや、うん。君が変態なのは知ってたけれど、・・・何か本当、大丈夫?」

 「怪我人が医者に大丈夫?なんて聞くものじゃないよ臨也。それにね、いくら夜だし自分の服が主に黒で構成されているからといってマンションの壁面をつたってくるなんて君ぐらいだよ。どうせ逃げてパルクール使って近くに来てみたら地上に降りるより上からいった方が速いとでも思ったんだろ?全く君も・・・何か、相変わらずだね。
 ところで君と会うのも久しぶりだね。卒業式以来かな?
 というか別に僕は君の専属医者になった覚えはないんだけど何でわざわざ私のところにくるかなぁ。全く奴の次には誰に目をつけられたんだい・・・っと」

 微妙な顔をして微妙な視線を投げかける患者に返答して私は彼のシャツの袖をまくりあげる。そしてあれ?と首を傾けた。

 白い肌を埋める痕。痣。痕跡。打撲のあと。

 あまりにも見覚えがありすぎるそれらに僕はしばらく考え込んで、臨也の顔を見た。

 「静雄?」
 「シズちゃんだよ」
 「シズちゃんっていうニックネームのよくお風呂を覗き見されて悲鳴を上げる国民的アニメのヒロインじゃないよね?」
 「ふざけるのも大概にしてよ変態。俺がシズちゃんって呼ぶのは世界中で只一人、君の言う池袋一名前負けしてる男、残念ながら三次元に存在するあのジャイアニズム100パーの破壊魔だけだよ。
  っていうかさっきから言おうと思ってたんだけど、君、すっごいアルコール臭いよ。そういえば俺が入ってきた時ワイン持ってたよね?ねぇどのぐらいあけたの?俺今から酔いどれ医者の卵に診察されるの?」
 「医者の卵じゃなくてちゃんと医者になったよ!」
 「免許持ってないじゃん」
 「闇医者だもの」
 「藪医者め」
 「腕は君たちが、いや、君が一番知ってるはずだけれどね?」

 うっ、と臨也が黙りこんだのを見て私はいい気になって鼻歌を歌いながら処置を施す。痛い痛いやっぱり藪だとひとしきり小さい声で臨也は悲鳴を上げて、一息ついて、そして問うた。

 「ねぇ、なんでさっきシズちゃんって信じなかったの?俺にこんなのできるのってあいつぐらいでしょ、今のところ」
 「え?いやぁ・・・」

 すごい自信だなぁと思いながらも私はしばし思案に耽って、そして答えた。

 「君たちを引き合わせたのは僕だよね、君に頼まれたからだけどさ」
 「あぁ」
 「まぁそこで一時的に君たちの間に関連性ができた、そこはいいよ。でもこの前俺達卒業したじゃない」
 「したねぇ」
 「で、そこで君たち二人は在学中で一番の大乱闘をやったじゃない」
 「やったねぇ」
 「・・・で、それで普通幕引きじゃないのかい?」
 「幕引き?」

 実に不思議そうに臨也は聞いてきた。子供が、なんで1+1は2なんですか?と聞くようなそんな純真さで。
 私はあのねぇ、と額を掻く。

 「君と静雄はお互い嫌いあってたじゃないか」
 「そうだね、そこは間違いない」
 「この前まで学校という一つの閉鎖空間にいた間は毎日登校すれば嫌でも顔を突き合わすんだからね、つっかかって追いかけまわして怪我をしてもよくわかるよ。
  でももう君たちは関係ないじゃないか」

 私達も、関係ないじゃないか。

 「街中で偶然遭ったとしても元同級生で大っ嫌いだった奴、それだけさ。まぁ卒業してから日が浅い・・・といえば浅いのかもしれないけれども、赤の他人といっても差し支えないかもしれないね。なのにまたなんで殺し合いなんてするんだい。無視すればいいだけの話じゃないか。
  それに君も彼も池袋に住んでるとはいえ、この人口密度の中だよ?何でこう、」


そう、何で、私の世界はセルティだけで十分なのになんで君たちは何度も何度も僕の世界に入ってくるんだい!