影踏み(1)
イタリアの気分が沈む(かもしれない。基本的に彼は脳天気だからあまり気にしないかもしれないが)。それを収拾する自分が一番苦労するのは目に見えている。一
応自分としてもイギリスとは昔から仲が悪いのであまり会いたくないことには違いない。今日はなおさら会いたくない理由が明確だった。
だから今日この場にイギリスがくるのはどうしても阻止したかった。
そんなフランスの思いを知ってか知らずか、イギリスは、
『そっか。ならいいけどよ。べっ、別に俺も呼んでほしかったとかそういう訳じゃないんだからなバカァ!じゃ、また今度』
相も変わらず面倒な言い回しで ―日本のところの言葉を借りれば、相も変わらず"ツンデレ"っぷりを発揮しながら― イギリスは電話を切った。そうしてフラン
スも電話を切って、ため息をつきながら携帯電話を再びテーブルの上に置いた。
「イギリス、何だって?何か約束してたの?」
イタリアがフランスに尋ねると、肩をすくめて嫌そうな顔をした。
「いいや、何かこっちに来たかったらしいけど、お前たちがせっかく来てるから断ってやった」
そう言ってウインクしたフランスに、ロマーノが、
「俺たちがいること言ったのか…?何か言ってたか?」
「ん?いいや、別に。兄弟揃ってるなんて珍しいな、ぐらいで。どうもあいつのところからもらってきた薔薇がこっちでも綺麗に咲いてるか気になっただけらし
い。まぁ多分お兄さんとこの美味しいお菓子を食べに来たかったのかもしれないけど、"スペインも後から来るぞ"って言ったら諦めてた」
普段は良い意味でも悪い意味でも自分のことしか気にしないロマーノが他人からの視線を気にしてるなんて珍しいな?…そうフランスは思ったが、どうも茶化
す雰囲気でもなかったので口には出さずにいた。
「こんちは?、親分の到着やで!ロマーノ!!」
「っ!!」
この綺麗な薔薇園には似つかわしい大声で挨拶し、椅子の背もたれごといきなりロマーノを抱きしめたのは、先程から到着が遅れていたスペインだった。