日々これ好日。
そういえばさっき辞典を枕にしてそのまま寝ていた、と言ってたはず。
この状況で彼女に限って放ったらかしはおかしい。・・・とすると本人は気付いてないわけか。
今日はまるで手の掛かる子供みたいだな、と思わず苦笑を浮かべた。
「・・・先生、カオに本の跡ついてるぜ」
「え!?きゃ・・・ッ」
「おっと」
ビキ、と音を立てそうな勢いで背が凍り付く。ちなみに拍子に取り落としかけた器はお見事な反射神経を見せた船長が空中でキャッチ。
やっぱり、やると思った。
「す、すいません~・・・・・・」
トホホな表情で縮こまるアティに向けて、カイルは気にすんな、と笑顔を向けたが、さっきのアレが効いているらしい。対する先生さんはううう・・・と小さく唸りながらも、無意識にかしきりと自分の頬を撫でている。
「さっき鏡見た時は何ともなかったのに・・・」
「部屋暗かったからじゃねぇか?ほれ、ここだ」
すい、と紅の細い髪をかき分けて、こめかみ近くから頬にかけての跡を指先で軽く辿ってやる。
――――自分にしてみれば、本当に何のつもりもない動作のつもりだったのだ、と。
後々ヤードにこっそり零していたらしいのだが。(ちなみにそゆとこにデリカシーってもんが足らない、と散々残り二人に減点チェックを入れられた)
とにかく。
はた、動きを止めたたっぷり数瞬後。
ボン、と湯気でも出そうなイキオイで、一瞬で見事に紅潮した彼女と向き合ってからようやく。
おいおい、なんでそこで赤くなるんだ。
いま自分は何かマズイ事でもしたのだろうか、とか。
ついでに目撃者がいなくて助かった、とか。(特に妹とか航海士とか)
・・・指先で辿った頬が気持ちいいなー、とか。
・・・諸々の事情がぐるぐるしてしまって、二人してぱっきり、固まってしまった。
・・・どうしよう。