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迷う事は許さない

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 少し鈍い所のある雲雀は、その程度の事で溺愛されているとはとても思えなかったのだろうが、普通に考えても興味本位にしては3年は長く、遊びであればそれ程長い間、男が男を抱けはしない。

「なるほどな。この時代の俺は必ず戻るって、お前に約束したんだな? なら大丈夫だぞ。俺はお前に嘘は吐かねーからな。しかし、事実とはいえ雲を掴むような話だな。ま、どうせ俺の事だ、お前に大事な事も幾つか話しておきながら、こっちの時代に来る俺にはその辺は何一つ話すなって言って消えたんだろ? 俺なら自分で全てを悟るだろうし、行き着く先は同じだとか言って」

「ワオ。本当に素晴らしいね、君。全くその通りだよ。現に君は、こちらに来てすぐ、自分を蝕むものに気付いたみたいだしね。あのメカニックも驚いたって言っていたけど。じゃあ、この先どうすればいいのかも、解ってるんでしょう? リボーン。君は本当に、素晴らしいよ」

 リボーンの自己分析の結果を聞いて、雲雀は屈託無く笑った。
 誰にも見せない、ただ一つの表情。
 無感情、無表情と言われる雲雀の、人間らしい一面に、リボーンは丸い目を更に丸くして少々驚く。
 彼を相手にここまでの信頼と距離感を掴み取っていたのかと思うと、リボーンは流石に10年後の自分を褒めてやりたくなった。

「そうだな。今の俺がやる事も、きっと計画の内なんだろう。ヒバリ、頼まれてくれるか? 明日、ツナにボンゴレの試練を受けさせようと思う。その為にはお前のその力と、本物の殺気が必要だ。お前が本気でアイツを殺すつもりで掛かってくれるなら、その役を任せたい」

「もうアレを受けさせるの? 君は随分とあの子を高く買ってるんだね」

 既にボンゴレの試練が何であるかを知る雲雀は、何処か不満そうに尋ねた。

「当たり前だ、どんなにダメダメな奴でも、俺の生徒だぞ? それに、こっちじゃ一応、使えるボスになってたんだろ?」

 少し温くなった緑茶を啜りながら、リボーンは構わずさらりと言い放つ。
 その声には僅かにも淀みが無く、まるで本当に結果が見えているようだ。
 愛用の中折れ帽の下から大きな黒目がちらりと向かいを伺えば、雲雀は珍しく悪戯っ子のような笑みを返した。

「そうだったね。僕には君以外どうでも良かったから、忘れていたよ。こっちの彼は、流石に僕をワクワクさせてくれる時があった。でもそれは、君が教育した10年という歳月の賜物だからね。今の彼はただの小動物でしかない。こちらの彼だって、あの試練を受けた時には生死の境を彷徨ったんだ。赤ん坊、もし明日あの子が死んでしまっても、君、僕を殺さないでね」

「ま、死んだらアイツの運命が此処までだったってコトだ。見込み違いと思って諦めるさ。
だが見てろ。ツナは必ず、ボンゴレの力を継承するぞ。あれは間違いなく十代目だからな。
 それよりヒバリ、俺がお前に手を掛けることなんかねーぞ。俺がお前に殺される事はあっても、逆は有り得ねえ。そんなこと、お前が一番良く解ってるだろ?」

 赤ん坊らしい可愛らしい笑みを浮かべながらも凄まじい殺し文句を零したリボーンに、雲雀は今度こそ満足したように極上の笑みを見せ、

「君には適わないな。 ――――― いいよ。“もう一度”手伝ってあげる」

と言った。
  

















 そして、翌日。
 雲雀はリボーンに言われた通りに、14歳の綱吉にボンゴレの試練を受けさせるべく、修行場に向かった。

 雲雀は修行場に着くなり押し殺していた殺気を剥き出しにし、常人ならば一秒も耐えられないだろう威圧感を漂わせながら、綱吉を殺す気で掛かると、その場に居る全員に宣言した。
 その言葉に子供達は俄かに顔色を変えたが、リボーンが冷静に、何をしようとしているのかという事を簡単に説明すると、全員が何かを悟ったようだった。
 即ち、送り込まれた人間の中で一番有望である綱吉がこの状況を打破出来ないのであれば、この先、どんな希望もないのだと。
 逆に、雲雀に打ち勝ち、綱吉が自分自身に打ち勝った時、新たな希望が生まれるかもしれないのだと。
 子供達が渋々ながらも納得したのを確認すると、リボーンは山本武を連れて部屋を出て行った。
 彼には山本武の家庭教師という仕事が待っている。
 敵の襲撃が何時来るかも知れない現状では、一秒の時間をも無駄に出来ないと踏んだの
だろう。短期間で何処まで行けるか解らないが、可能な限り彼らの戦闘能力を上げておかなければならない。
 ほぼ同時に、同じ理由でビアンキが弟であり、生徒でもある獄寺隼人を連れて部屋を後にした。
 誰にとっても辛く苦しい修行になる、家庭教師達の胸にはその予感があった。
 流石に教え子が心配になったのか、単純に結果を見届けに来たのか、リボーンは一時的に修行場に戻ってきたが、彼は現状を静観するだけに留まった。
 その姿を横目に観ながら、雲雀はただ、自分の役目を果たす事に専念した。

 過去の亡霊達から無事ボンゴレの十代目と認められれば大いなる力が与えられるが、継承出来なければ、彼は此処で死を受け入れなければならない。
 14歳の弱い少年に対して行う過酷な試練は、吉と出るか凶と出るか解らなかった。
 吉という結果は、リボーンが信じているだけだ。
 けれど、誰一人として、この運命の道筋に背く事は出来ない。


 そして少年、沢田綱吉は今、雲雀が匣とリングによって創りだした特殊空間、球針態の中に閉じ込められている。
 絶対的な遮断力、その前にはどんな力も太刀打ち出来ないという。


 「……内部の酸素量は限られている。早く脱出しないと、死ぬよ」


 最小限の顔ぶれが残った部屋の中に長い沈黙が落ちた。
 雲雀も普段通りに無関心を装いながら、密閉空間の中で苦悶する少年を見守り続ける。
 それでも気付かぬ内に、手にじっとりと冷たい汗を掻いていた。

(必ず出ておいでよ。沢田綱吉。君までいなくなってしまったら、彼も、ボンゴレも、本当に終ってしまう)

 自分の未来や、幼い守護者の今後よりも、愛する人間の未来が途絶えてしまう事が、雲雀にとっては何より恐ろしかった。

(僕もこの時代の沢田の亡骸は実際に観たわけじゃないから、本当に死んだかどうか解らないし、その辺は何とも言えない。六道骸の幻術も全く衰えていないと聞くし、出向いたのが幻覚で出来た沢田だったと言えなくもない。それに、ああ見えてボスだったんだ、影武者ぐらいは居たかもしれないし。二人で口裏を合わせて何かを画策していたのかも…。だけど、それはあくまで「未来の沢田」の事。今、この子が死んでしまったら、もう何も残らない。過去そのものが消滅する。それだけは紛れも無い真実だ。…………そうしたら、リボーンはどうするんだろう)


 書類一枚で通達され、密葬で済まされたボスの死。
 突然の事とは言え、不可解な点は多々あった。
 特に、銃殺されたとされる綱吉の遺体を、実際には10年後の嵐と雨の守護者以外は誰も見ていないという事。
 それ以前に、2人も守護者が同席していたというのに、抵抗する暇も無くボスが殺されたという事。
作品名:迷う事は許さない 作家名:東雲 尊