二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

HONEYsuckle

INDEX|2ページ/25ページ|

次のページ前のページ
 

家出2日目


 この世にはどんなに願ったって変えられないことがある。人の思いなんて時に虚しいまでに報われない。俺はそれに幼い頃から気付いていて、その反面、願いを行動に変えることで動かせる運命はあると信じてた。そしてまた、変えてしまったら取り返しのつかないものが、この世には存在することを分かっていた。
 俺は臆病だった。

 翌日、鬼道は何事もなかったかのように円堂の両親に丁重に挨拶し、何事もなかったかのように学校にいった。二人で同じ家から登校する違和感を笑って、いつもと変わらぬ姿勢で授業をうけ、部活に出て。帰途についた。
「なあ鬼道、お前…」
「心配するな。荷物を取ったらすぐ帰る」
 振り向きもせず鬼道は言った。普段からただでさえ読みにくい表情を、今日は見せようともしない。
「…やっぱだめだ」
 勢いよく肩を引くと、咄嗟にバランスを保てなかった鬼道がよろけて電柱に寄り掛かる。その腕を掴んで正面から見据えたゴーグルの奥の瞳には、いつもの強い光が見えなかった。ほらやっぱり、と口には出さずに考えて、円堂は目をそらさず言い切った。
「お前がちゃんと解決できるまで、俺はお前のこと帰さないからな!」
 見開かれた赤い目にようやく自分が映った気がして円堂が手の力を抜き僅かに口元を弛めると、つられたように鬼道も眉を下げ、弱々しく笑った。いつも堂々と自信に満ちた不敵な笑みばかりを見せていたから、こんな鬼道をみるのは久し振りだった。いつだったか敗北に打ちひしがれて、自分の無力さを悔いていた頃の、寂しそうで悔しそうな、儚い表情を思い出す。今度こそ、自分は鬼道になにかしてやれるだろうか。円堂は、自分は何もしていないと思い込んでいて、ようやく頼ってくれた鬼道に何が出来るか、模索する。今はただ笑って傍にいることしか出来ないけれど、鬼道がそれを望んで訪ねて来たのなら、そうしてやりたいと思う。
「…すまない」
「良いって。それより早く帰って飯食おう。鬼道はうちの母ちゃんの手料理食べんの初めてだろ。美味いんだぜ」
 夕日で鬼道の顔は逆行になっていただろう。だから反対に、鬼道からは円堂の顔が良く見えた。眩しいというにはあたたか過ぎる、オレンジ色の笑顔。

作品名:HONEYsuckle 作家名:あつき