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Aの憂鬱

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「条件がある。」
「どんな?」面白がってるな…

手書きにすること。
家でやること。
他のデータは全部処分すること。
おれに見せないこと。
勿論仕事を真面目にやること。

「メモぐらい良いだろう。」
「仕事真面目にやる気あるのか?」
見つけたら没収。もちろんこの絵も没収だ。

「良いのか?」
「おれはこの事は忘れる。」
処分したら頭の中から抹殺する。
「酷い。」どっちが酷いんだ。

「それが嫌ならご飯抜く。」食欲なんか無いぞ。
不満そうに承知した。よし。すっかり忘れてやる。
1枚こっそり絵を隠したけど…。内緒。

                   ☆

次の日から枕元に一枚ずつ手書きの原稿が置かれてる。
「何?これ。」
「きみが処分してくれ。自分でやるには忍びない。」
「朝から?」
「朝からやっても良いならそのほうが嬉しいが。」
何をと言うまでも無い…。ニコニコして言うか。
なんてやつ。


とりあえず封筒に入れ鍵のかかる引き出しにしまう。後でまとめて処分しよう。

そして延々と置かれる日々…。そのうち厭きるだろう。
希望。


「本当にちらっとも見ないな。」
当たり前だ。あつかんべー。

どんなことも日常と化すと慣れるとは言え慣れたく無いこともある。

とりあえず読まないで無視する方向。早く厭きてくれないかな。


                  ☆ ☆

ベッドの陰に何か落ちてる…。
「げ!」寝ぼけまなこで入れてるから落としたか…。
手書きの原稿。きれいな字で何を書いてるんだか。まったく。

引き出しは一杯。ばたばたしてるから処分してる暇が無い。
さすがに目の前で処分するといかにも傷つきました風に見られるから止めた。
一々書斎に持っていくのも面倒。でも直ぐ溜まるし…。うーん。

ストレス解消に以前作ったハロを改造。
朝起きて寝室のドアが開いたら飛んできて挨拶するようにセット。
「アムロ・ゲンキ?」やはりハロは片言じゃなきゃ。

「おはよう。はい。」と今日もよこされた原稿用紙をハロに近付けるとかぱっと開いて飲み込む。
口の中で溶かす。
よし。この調子で溜まってるのも食べてもらおう。

「アムロ…。」後ろから恨めしそうな声がする。
「なんだよ。処分するって言っただろ。」
「だからとって今日書いた分を処分しなくても…。」
「どれからだって良いだろう。」

「良くないぞ。」何が?
「せめて書いた順に処分してくれ。」
「順番なんかわからないよ。」
「ちゃんとページふってあるぞ。」

そうなのか…。見ないで引き出しに放り込んでるので気がつかなかった。
かと言って今から見るのも嫌だ。面倒になって鍵を渡して
「そんなに言うなら並べ替えて置いてよ。」

冗談だったんだけどな…。
引き出しを開けるとキチンとファイリングされてる。
お望み通り頭から処分しよう。

           ☆  ☆  ☆

ファイルごとハロに入れるのはさすがに無理なので開いて初めの方から何枚か抜いて処分しようとしたらシャアに止められる。

「ちょっと手直ししたいんだが。」
「すでに何枚か抜けてるけど?」
「かまわない。頭に入ってるから。」

「だったらこれ必要ないだろ。」
「始めから書きなおしても良いんだが。これに手をくわえた方が早い。」
赤ペンですか?
別に読まないから何でもかまわないけど…。

「何で今頃?」
「書き加えたいエピソードとか整合性とか。」
整合性…。こんなことに整合性を求めてどうする。
「まさか仕事中も考えてるんじゃ無いよね。」
「…仕事中はない。」怪しい…

胡乱気に見てると
「移動中とか…」寝てくれたほうがましかな…
「ちやんと仕事してくれないなら丸ごと焼くぞ。」
とファイルごと渡す。
「鍵のかかるところに置いてよ。」

しばらくしたら倍になって返ってきた。
現実逃避?違う意味で心配になってきた…。
そう言えば最近は朝から機嫌良いし…。

現実より妄想の方が良いのかな。シャアの妄想の中のおれはきっと全然違うんだろう。
気になるけどだからと言ってあれを読むのは嫌だ。
それよりおれが入れてる引き出しの下にシャアが筆記道具を入れている。

丸ごと処分したい…。

何の因果で朝っぱらからこんなことしてんだろ…。
大体何処でこんな事思いついたのやら。

「あのさ…。何でそんなもの書こうと思いついたんだ?」
「ああ…。誰かがくれたのを読んで。」
「誰が?」
「書類に混じっていたから。」

秘書課の誰かか…。嫌がらせかな。


「世の中にこんなものもあるのかと。」

まぁ普通のゴシップ誌とはちと趣が違うよな…。

「これは違う!アムロはもっと可愛いんだ。と思ったらつい。」
「違うのが普通だろ…。」
そこで自分で書こうと思うのがわからん。

なんにせよ毎朝機嫌が良い。良いのか悪いのか。溜息。

毎日飽きもせず原稿をよこすしファイルは厚くなるし…。
自分で整理して時々手直ししてる。
あまりにご機嫌なのでおれは居なくてもいいんじゃないかと思う。

が夜は相変わらず猫と膝を争う…
何であんなに元気なんだろう。不機嫌なのとどっちがましかなぁ。

                          ☆ ☆ ☆ ☆

引き出しが開かない…がたがたやってもびくともしない。
「サイドテーブルごと処分だな」
「それはアンティークだぞ。」

「おれ前に言ったはずだよ。そこに入りきらなくなったら丸ごと処分するって。」
「そうだっけ?」
「ついでにもう寄こさなくても良いって言っただろ。」
と言うか要らない。

「誰にも読んでもらえないと寂しい…」
本気でしょぼくれてる。
「おれは嫌だ。眩暈がするし。」
具合が悪くなるから枕元に置くのはやめろと言ってるのに聞かない。一度絞めなきゃ駄目か?

「冷たい…」何言ってやがる。
「そんなに読んでもらいたかったら勝手にすれば。おれは無視する。」ムッとしてる。
「とにかくテーブルを処分するのはちょっと待て。」
「それは良いよ。でもこれは返す。」
今朝置かれた紙は返す。本当に寂しそう…

時々上の空になる。ちゃんと仕事して欲しいな。

仕方ない。サイドテーブルの裏をみて分解できるか様子を見る。
「これは無理だな…。」
引き出し壊して修理した方が早い。

「専門家に任せたほうが…。」
「中身見られるの嫌なんだから文句言わない。」

引き出し開かないほど一杯にさせたやつが悪い。
正面から色々使って出来るだけ壊さないで開けようと悪戦苦闘。
斧でぶち壊した方が早いのに…せめてバリを使いたい。

きれいな物は出来るだけ怖したく無いけど…ばきっ
と言う音と共に開いた。
ファイルがふくらみ過ぎてひっかかっていた。中身は丸ごととりあえず鞄に入れた。

可哀想なテーブルは修理行き…。

鞄がずっしりと重い。紙だもんぁ。これどうしよう…。
「燃やして良い?」
いや泣かなくても…。
「じゃはい。」鞄ごと渡す。

「おれに見せなくても良いからね。と言うより見せたら燃やすよ。」
「ひどいな…。」そう言いながら大事そうに鞄を抱える。
「もう止めないけど…」
作品名:Aの憂鬱 作家名:ぼの