Aの憂鬱
出来れば他のもっと普通の趣味を持って欲しかったがもともと変だから無理か…。
誰も相手にしないと可哀想かな?でも誰にでも良いと言う訳にはいかないしおれは嫌だ。うーん…
おれに読ませるのは諦めたらしく枕元に置くのはやめてくれたがちょっと元気が無い。昨日までとは雲泥の差。
少しうざったいので元気付けようと急いで工作。ちょっと手を加えて赤く塗って完成。
「はい。」
「なんだね。これは。」
「あなた用のハロだよ。」
「せっかくだが…。」
「文字認識して片言で感想を言うようにしたんだ。」
胡散臭そうに観る。
「試しに一枚入れてみてよ。」
一枚入れてみる。つぶらな目がチカチカしてやや暫くしてからゆっくり出す。
手にとって見ると赤で何か書いてある。
「あれ?」
「…校正しているようだぞ。」
「そんな機能付けた憶え無いけど?誤字・脱字のチエックじゃないの?」
「いや…校正記号が書かれている。」
なんでそんなの知ってるんだろう。
「そんなの入れたかなぁ?」
文章理解のために色々ぶち込んだけど…。
「ちょっとチエックするよ。」
抱えてキッチンに持って行こうとすると直すのは何時でも出来ると言って書斎にもって行った。大丈夫かな?
猫が警戒するのでハロは居間から撤去。おれのはキッチンにおいてシャアのは書斎に置いてある。
鞄とハロを書斎に置いてから相変わらず書いてはいる様だが原稿は見てない。その代わり書斎に鍵をかけられた。
このまま放っておいて大丈夫かな?多少不安だが係わりたくないのが本音。
どうせ何か起こったら嫌でも係わらされるから今のうちに少し休んでおこう。
しかし良くあんなに書いたな…おそらく現代進行形。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
毎日枕元に置かれていた原稿を見なくなって思っていた以上にストレスになっていたんだなと思う。
朝ごはんが美味しい。
シャアは見た目は変わらないが書斎にこもる時間が長くなった。いじけてるのかな?
試しに紅茶を入れてノックすると
「ちょっと待て。」とやや暫く待たされる。
「お茶冷めるよ。入れ直そうか?」
「いや。居間で頂くから先に行っていてくれ。」
部屋に入れてくれない。なんか怪しい…。
でも聞くのもやぶへびな気がする…。
上の空で撫でてて猫に引っかかれてしまった。
食事が終ってお茶をするのも惜しんで書斎にこもるようになった。ほんの一時間ぐらいだけど。
でちょっと疲れて出てくる。本当に何やってるんだろう。
おまけに出てきたらやたらべたべたしたがるし。
「そんなに書くの好きなの?」
「好き…だな。うん。書いてみてわかった。きみのことを考えるのが楽しい。」
「実物より良いみたいだね。」
「妬いているのか?」
「それなんか使い方違わないか?」
架空のものに妬いてどうする。
まして相手が自分を基にして考えられたものじゃ…。
「おれどうせ妬くなら生きてる人間相手にしたいぞ。」
「きみが人相手に妬くなら嬉しいが…」
「人聞き悪いな。何相手にするんだよ。」
「情けないから言わせないでくれ。」…どうせMS好きだよ。羨ましいよ。この話題は鬼門かな…。
「あのさ…書斎にこもって何やってるんだ?」
「いや…別に何と言うわけでは。」
目を逸らしたな。
「何かやましい事だな。」
「やましいと言うほどではない。」
ふーん。
「良いけどね。」
何時まで続くかわからないけどその間にこっちもハロの改造でもしてよう。
「良いのか?」
「だって言わないし。聞く気もないだろ。勝手にすれば?」
「冷たい…。」そんな事言われてもなぁ。
「だって止める気ないんだろ?だったら気が済むまでやれば良い。」
「アムロ。」
「別に応援してる訳じゃないから。おれは猫と遊んでハロに手を加えてるから気にするな。」
「ずるい…」
「じゃ止めれば?」
「もう少し待ってくれ。」
「待たないよ。放っておくだけ。」
あ いじけた。止めるかと思ったが次の日も書斎にこもった。頑張るなぁ。
が書斎をでてからの密着度が増した。動けない…
「どうして書斎から出てくるなりくっついて来るんだ?」動けないんだけど。
「疲れを癒そうとつい。」
「仕事に影響するなら問答無用で止めてもらうよ。」
「影響させないために集中して書いてるんだがハロのチエックが厳しい…」チエックって何してるんだ?
「ハロ暴走してるんじゃないか?直そうか?」
「書き終るまで良い…」
「それに暫くこうしてれば治る。」
暫くってその間動けないじゃん。いや引きずれば良いか。
試しに動くとそのままついてくるのでキッチンに行ってお茶を入れる。
新手のおんぶお化けかよ。
とりあえず何か暖かいものを飲ませて様子見るか。どうせ書くんなら日記でも書けばいいのに。
ホットミルクを甘くして出す。なんかぼーつとして飲んでる。
「どうしてそんなに消耗してる訳?無理しないで止めれば?」
「途中で止めるのは嫌だ。」
「誰も気にしないだろう。」
「…確かに誰も読まないか。」
寂しそうに見るが
「ごめん。おれ生理的に無理。」
最初は流せばいいかともったんだが眩暈がするようになってしまった。
「日記だと思って書けば読まれなくても当たり前じゃないかな。」
「読まれるのを意識して書くのもあるが。」
「それ日記って言わないんじゃないか?」
文学者の考える事はわからん。
「あなた文学者じゃ無いんだから…。」
もっともあれを日記と言っても誰も信じないな。
「同じように研究の対象になる。」
「見つからないように隠すの得意だろ。それに死んだ後の事は良いよ。どうせ変だと言われるだけだ。」
そりゃ出来れば普通の日記を書いてもらったほうが良かったけどもう仕方ない。
あれは日記だと思って封印する。
「日記と言うよりラブレターのようなものだ。」
「そんなラブレター要らないから。」
「普通の手紙なら受け取るのか?」
「うーん。普通のならもらっても良いけど。」
手紙なんて証拠になるものよこさないだろう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
こもる時間が短くなったがそれでも毎日毎日書いてるようだ…。
その間機械いじりができるから良いけど。
「何を作ってるんだ?」
「小さなハロを猫の遊び用に作れないか思案中。」
材料が問題。壊れやすいのは承知の上で作ってみようかな。
「楽しそうだな。」
「考えるのも作るのも楽しいよ。」
「ならわたしの気持ちもわかってくれ。」
「だからもう止めて無いだろ。普通の話を書いたら読ませてくれ。」
「…普通だろう。」
「一生読むのは無理そうだな。」
元々本読むのは苦手だから良いけど
シャアが書斎にこもってる間猫と遊んだりハロ改造したり羽伸ばしてたらだんだんこもってる時間が短くなってきた。
そろそろ厭きたかと思ったら寂しいから場所変えると来た…おれが機械いじりしてる側で原稿書くのか…。
「色々音出るけど。」
「書いてるときは気にならない。ひと息ついたときに寂しいのが嫌だ。」
「おれも集中してる時は気にならないけど。狭くない?」
二人で作業するには少々手狭な気がする。