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Aの憂鬱

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「わたしはそんなに場所要らないぞ。」
手書だもんな…
机の上は譲って床の上に場所広げることにした。目の端に入らないほうが良いし。

キッチンでごそごそ作業してシャアが止めたらおれも止める。と言うか止めさせられる。
たまにはもうチョイやりたかったりする。
それより暫く頭が戻らない時のがやばい。シャアの目が怖い。

「睨むなよ。」
「上の空なのが悪い。」
「あなたの切り替えの良さに感心するよ。」
「集中した方が能率が良いからな。」
たしかに…。何書いてるかは除けといて。

「おれはつい解決方法が見つかるまでずっと考えちゃうんだよな…」
「実際たまに気もそぞろなときがあるな。」
「機械関係だと特に。それ以外は休み休み考えるんだけど…。」浮かばない時は一旦休むのも大事。
「わたしは始終棚上げにされてる気がするんだが…」
「…気のせいだよ。」

面倒な事ばかりするからだ。それに無視すると実力行使するじゃん。たまには一人になりたいぞ。
そう言う意味で言うとシャアが趣味に没頭してる間は気が楽だ。
良い面だけ見て後は目をつぶる。そうやって人生妥協してくんだなぁ…。

妥協とか我慢とかは生活を共にする以上お互い様だ。で聞いてみた。
「我慢してることか?もっとかまって欲しいとかもっとやらせろとか…」
「それ以外に無いのか?」
「きみの寝坊には慣れたし不満と言えばそれぐらいだな…」
聞いたのが間違っていたんだろうか…。

この話題は避けたいのかおれの不満は聞いてこない。
聞かれたら沢山言いたくなるからその方が良いか…いじけられると面倒だし少しずつ機械に触る時間を増やしてるし。

機械仕事に没頭するといじけられるけど元気が出る。たまにはやらないとこっちがストレスでエネルギー切れしてしまう。
色々バランスが大事だ。でもいじけられる回数減らないなぁ…。

つい感慨にふけってると
「何か言いたいのか?」と言い出した。沈黙が怖いのかな?
「べつに…」
今更言ってもなぁ。変わらないのに感心する。一貫してると言うか。
よく厭きないな…一途と言えば聞こえはいい。

「どうでもいいのか?」
「まさか。ただ聞く耳持たないだろうなと思ってるだけ。」
大人しく人の言うこと聞かないのはお互い様だな。

「人のことが言えるのか?」
「言えないから黙ってるんじゃないか。」
言い出したらきり無いし。
おそらく我慢してるのはやつの方が多いだろう。神経細かいから。

「言って良いなら幾らでも言うけど。」言うといじけるから面倒だ。
「あなたは言いたい事本当に他に無いの?」
「他には目を瞑るからちゃんとかまってくれ。」
ちゃんとかまうってなんだよ…
なんと言うか…根負けするな…。ここで甘やかすから駄目なんだろうか。

「目を瞑ることがあるなら言った方が良いと思う。」
「文句言うより抱きしめてる方が良い。」
そんなに言いたいことあるのか…。説教されるのは嫌だが張り付かれるのもなぁ。

「疲れてるね。まさか趣味で根詰めて疲れてるとか?」
なぜ詰まる。
「書くのが楽しいだけじゃなくなってきているが…。」
「それはずいぶん入れ込んでるね。」

趣味の域を超えるとか言うなよ。そんな事言うなら真面目なもの書け。とか言うと真面目に書いてると言うんだろうな。
真面目に書くだけじゃなく普遍的なものを目指して欲しいな。それなら俺でも読める。多分。

「あんまり根詰めるなよ。仕事に影響するようならそのペン取り上げるよ。」
「それは困るな。これが一番手に馴染んでいる。」
「ちょっと手を見せて。」

「占いか?」
「違うよ。」手に触れるとペンだこが出来てる。
まあ毎日凄い量の書類決裁してるからどの道できるか…最近MS乗って無いから手柔らかくなったかな。

「肩凝らないの?」
「大丈夫だ。」ずるい…いや羨ましい。
「良いな。おれ肩凝りやすいんだよな…。」
シャアの手をはなすと今度はおれの手を取って
「手相を見てあげよう。」とか言う。

「今頃ナンパ?そんなので引っかかるの?」
「きみが引っかかった。」あれがナンパか?過激だな…。
「で?本当に占えるの?」
「いや。手を握りたかっただけだ。」おい…。
根詰めすぎてボケてんのか?

「仕事中にしたらパワハラだな…。」
マッサージでも覚えてくれれば良いのに…。もっとやばいか…。いい加減手を放してくれないかな…。
手を放さないで
「この辺にツボが…」とか言って押す。

「ツボって?」
「神経や血管が集まるところと聞いたが。適度に刺激を与えると体の調子を整えるのに良いらしい。」
「素人がやって大丈夫なの?」
「わからん。」
思い切り手を引いた。ちょっとむくれた。

「どうせなら専門家にやってもらいたいよ。」
探してみるかな。
「駄目だ。」
「何で?」
「きみに触れさせるぐらいならわたしが勉強して資格を。」
べち!思わず手が出る。

「そんな暇無いだろ。」
「だが…。」
「あーはいはい自分で本読んで勉強するよ。」
どのくらい効果が在るかは謎だ。

ツボかぁ。MSにもツボが在ったら便利かな?大きいから大変かぁ…。
つい現実逃避に流されてるとシャアもぼーつとした顔してる。じっと見てると目があった。と逸らした。
何か余計なこと考えてたな。じーつと睨むと軽く咳払いをして何か言いかけるので「止めろ。」と念を押しておく。
ツボの本読み出したら隠そう。

止めた分書く事で発散させてるようで書くスピードが増した上に量も増えた。
いやー何処に入れてるんだろう?隠しきれるのかな?
つい心配になって

「それさぁ。この間から同じ話を書いてるのか?」
「そうだ。」
「えらく長いな…。」
「まだやっと口説き落としたところだ。」

「まだ続けるのか?」
「これからが本番だ。」
「あーそう…。」ほっとこ…。

書斎には鍵がかかってるし掃除は自分でしてるから誰も入らない。はずだ。多分。

「読むか?」
無言で手で×を作る。わざとらしく溜息ついてまた書き出す。
真剣な顔して書いている。そう言う顔をされると止められないが読むのは無理。

お茶を入れてから床に座り込んでソフト書き換えのため画面と睨めっこ。
うーん。動きはどうにかなるだろうけど材料と大きさか…。直ぐ壊れそうだけど部品換えればいいか…。
考えがまとまらないうちにシャアが原稿をまとめて今日の分は終了。どうもタイミングが合わないな…。

片付けながらまだ何か使えるもの無いかと考えてると
「アムロお茶を入れてくれ。」と言われる。
上の空なのがばれてるな。

「持って行くから座ってて。」
市販の玩具で使えそうなのを探そう。
猫と遊んで気晴らし。動物にもツボがあるそうだからそのうちマッサージしてあげよう。

猫を撫でながらマッサージより針かなと思ってると
「今何を作ってるんだ?」と聞かれる。

「変わらないよ。猫用のハロ。部品はどうにかなりそうなんだけど外側がね。」ちょうど良いのが無い。
自分で作るにしても用意しなきゃいけないものが色々ある。やっぱり特注かなぁ。

「そうか。」とじっと見てる。
…おれにも聞いて欲しいのかな?
「どうぞ。言いたければ聞くよ。」
最後まで聞くとは限らないけど。

「気にならないのか?」
作品名:Aの憂鬱 作家名:ぼの