Aの憂鬱
「内容は知りたく無いし楽しそうだから良いんじゃない?」
「寂しいんだが…」
「でもわからない事は聞きたく無いよ。あなただってシステム構築の話なんて聞きたく無いだろ。」
一応黙ったが納得した訳じゃなさそう。内容がああじゃなければ他に同好の士を探せと言えるんだけど。
「そんなに誰かに読んでもらいたいなら登場人物の名前を替えるしかないよ。」
「それは嫌だ。」
「だったら諦めろ。誰でも良いから読ませようとするなよ。」
「流石にそれはしないぞ。」
本当か?おれに読ませるのはやつと諦めてくれたようだ。
元々言いたいことがあって書いてるんだから誰かに読んでもらいたいと思うのは無理ないんだろうけどでもなぁ。
こっそり焼いたら泣くだろうな…。ハンストするかも…。
熱出すかもしれないし逆上して過激なことするかもしれないな…。
「出来上がったら製本して置いておけば。」
「…まだ当分出来上がりそうもない。」
何そんなに書くことあるのかな…。書類作成が苦手な身としては羨ましいような考えたく無いような。
「終るのが寂しいのかもしれないが今のところそこまでいってない。」
「今まで書き終わったのあるの?」
…。沈黙。返事が無いって事は…
「ずつと同じ話書いてるのか?」ってことはおれが読まされたあれか?
「あれは粗筋だ。それに肉付けしてる。」
うわー。なんか眩暈が…。
「おれあなたの側に生まれなくて良かったよ…。」
しみじみ思う。
子供の頃から巻き込まれてたんじゃかなわん。
想像もつかないけど遠慮するぞ。
無言でいじけてるな…
実際に身近にいたら単純にあこがれてその他大勢の一人で名前も覚えてもらえないと思うんだけどシャアはそう思わないらしい。
と言うか固定観念か?その上で妄想に走ってるんだからついていけない。いやいきたく無いな…。
おれには現実で手一杯だ。
「そんなにしみじみ言わなくても…」
「側にいたらどうせ利用されるだけだろうし。」
「そんな事は無い!」いや。するだろう。意識してるかどうかはともかく。
おれも側にいれば利用されても当たり前だと思うかもしれないな。
「あなたの立場なら仕方ないだろう。」
「きみを利用してる気はない。」
「そうだね。」今はしてないな。
「ただ側にいて欲しい。」
「いるだろ。でもそれじゃ足りないんじゃないの?」
「足りないが嫌われたく無いから我慢してる。」
えーとそっちか?満足して無いから変なもの書くのかな?そう言われても好きにさせるとこっちがへばる。
「好きなだけ書いてくれ…。」
「書いてるときは楽しいんだが…」思い切り×。
「少しぐらい気にしてくれても…。」
「読まされるのは嫌だ。」
頬杖ついてじっと見る。そう言うアピールは可愛くないぞ。
「名前替えるか秘蔵するかどっちかだよ。名前変えてもおれは読まないけど誰かに読んでもらえば。」
「虐めだ。」どっちが…
「わたしが何をしても興味が無いのか?」
「だって趣味の世界だから。」
止めても聞かなかったんだから好きにさせるしかないんじゃないか。
「冷たい…」
「そんな大げさな。」
「どうせ顔にしか興味が無いんだ…」おいおい…
本気でいじけてるのか振りなのかわからないな。
「あれだけ止めても聞かなかったくせに趣味として認めたら文句言われるのか?」
「気にされないのも嫌だ。無視されてるような気がする。」してるぞ。
「あなたの趣味だと思ってるけどおれを巻き込むな。」
「きみのことを書いているのに。」
「正確にはあなたの妄想の中のおれだろう。」
足りない分をそれで補おうと言う事だろうけど。
「そっちの方が良いんじゃないの?」
にっこりして「妬いてるのか。」と言う。
「いや。飽きたんだろうと思って。」
「とんでもない!」
「じやなんであんなに嬉しそうに書いてるんだ?」
「可愛いから。」
可愛い物好きだっけ?
「おれが可愛いとか言う時点ですでに妄想の世界だ…」
「どこから見ても可愛い。一番可愛いのは」聞きたくないので口を押さえる。
「それ以上言うな。」自分の耳を塞いだ方がいいのか?でも語りだすと暫く止まらないからなぁ。
「…言わせてくれないから書くしかないだろう。」
「じゃ耳塞いでるから勝手に言って。」
「アムロ。そんなにわたしが嫌いなのか?」
「ベッドでのことを口に出し言われるのが嫌なんだ。」
頭の中のことはどうしようもないけど聞きたくないし見たくない。文字で読むなんてとんでもない。
「やるのは平気なくせにどうして聞くのは駄目なんだ。」
「露出趣味は無いぞ。」
「わたしだって無いぞ。」
「じゃそれはなんだよ。」
「きみのことを書いている。」…確かに。
「プライバシーの侵害。」
嘘に本当を混ぜて書くなんざ最悪だろ。万が一世に出たら…あんなに細かく書かれると疑うやつが必ず出てくる。そんな噂は絶対に嫌だ。
「モデル料は?」
「体で払おう。」やなこった。
「書きあがったらそれを寄こせ。」
「…処分するのか。」
「さぁね。」
「置いておく訳にもいかないだろう。抹殺するのが一番だ。
「読んでくれないのなら嫌だ。」
いや…だから無理だって…
顰めた眉が深くなる。シャアも真剣に見つめてる。不毛な睨めっこ。
でもいじけ具合を見るとここらが限界かな。これ以上いじけられるとあからさまに仕事に影響する。
あーそれにしてもなんて強情なんだうう。こっちが折れるの見越してるな。ムカつく。
「じゃ最後のところだけ読むよ。」
嬉しそうな顔をする。花が咲いたようだ。
呆れながら見とれてしまう
「ハッピーエンドにしてくれよ。」
「無論だ。」
「本当か?あなただけハッピーとか言わないだろうね。」
何故そこで黙る。
「なかなか言うことを聞いてくれない…。」
知るが。
「そんなとこまで面倒見られないよ…。」
何となく書き終わらないんじゃないかと言う気がする。
それならそれで好きにやらせておこう。
がその前に念押し。
「読んでやるがら書き直して反故にした分ちゃんと処分しろよ。」
「いや。でも。書き終わってない。」
「今の決定稿があれば良いだう。どうせ始めの頃のは無いんだし。」
「それはそうだが…。」
早く出せと手を出すとしぶしぶ取りに行った。
持ってきたのは箱一杯。
渡したときは鞄一個だったよな…。
「ちなみに今何稿日?」
「三稿。」
よく厭きないな…と言うよりこれは多分何時までも書き直しそうだな。
読まなくて済みそうだけど何時まで書く気なんだろう。
もうあれは日記だと思うことにする。
「それにしてもよくこんなに書き直したね…。」
「きみの所為だぞ。」
「おれ?」
「きみのくれたハロが訂正入れるがらその都度書き直してこうなった。」
そんなに意地にならなくても。
「ちゃんと休めよ。」
「それは心配ない。わたしが時間見ないときみの方が休まないではないか。」
「そうかな?」
「言わないと何時までも食事をしないし止めない。」
「言われる前に止めてると思うけど。」だって煩いもん。
「亭つ直前に止めるのは言われないと止めないのと同じだ。」かな?
やぶへびだ。笑って誤魔化したい雰囲気。
「きりが良くないんだ。たまには気が済むまでやらせてくれてもいいじゃないが。」