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Aの憂鬱

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「さっきまで書くのに集中してたくせに。」
「今日はもう良い。」と片付けだした。今日はここまでが。作り終わるまで時間がかかりそうだな。

暫く拗ねられて手を付けられなかったが落ち着いてまた書き出したのでこちらも作るのを再開。今度は書きながら色々聞いてくる。
「15の頃に戻れるなら何時が良い。」
「15の頃?そうだねぇ。」色々あったからなあ。
「いっそ戦争に巻き込まれる前がいいかな。」
「そんなにわたしと会いたく無かったのか?」
「ララアを殺したくなかった。と言うか誰も殺したくなかった。それだけ。ってか15には戻りたく無いそ。」
なんで15?
「出会った年だから。きみは16と言っていたが。」
「そうだっけ。」よく憶えてるなぁ。
「だから15じゃなきゃ駄目だ。」
「15じゃない方が良いんだけど。」
「では23か?あの頃でも色気はあるが…。」
「なんで23?」
色気ってなんだよ。
「写真はあるが実物知ってる頃の方が発想が…。」
「は?」
「嫌なんでもない。」
不穏だ。

こっちがハロ作りに夢中になってる間に気がついたら違うネタを書き出していた。
今度は記憶喪失物らしい。勝手に人を記憶喪失にするな。と言うがまたおれ?
「いいかげん違う話を書けば?」
「きみのことだがら楽しいのに。」
「おれを好き勝手できるからか?」
「そうでもないぞ。わたしが意図したように話が進むとは限らない。」
「そうなの?」
「登場人物が勝手に動き出すことが間々ある。」
「そんなの書いてて楽しいのが?」
「きみに関することなら何でも。」
嘘くさいけど欲求不満の解消になっているので突っ込まないでおこう。
「最近は先が読めないのも楽しい。その代わり進むのが遅くなるが。」
「それは良いけど前の話は終ったの?」
「いや。」
「意外だな。正直他の話しを書くとは思って無かったよ。」
「終らせると処分されるから…。」
寸止め?なんか体に悪そう…。
いかん!品の無いこと考えてしまった…。影響されたか?

「中途半端だね。らしくないと思うけど。」
手を握ってじっと見る。
「現実でも妄想でもきみを誰にも渡さない。なくしたくない。」
おい…。それで誤魔化す気か?
「それ意味全然違うだう。モデル料でくれるんじゃなかったの?」
「一生懸命書いたのに…。」それは知ってる。
「どうせ頭の中に入ってるんだから処分しても問題ないと思うぞ。」
いっそ頭の中から駆逐したい…。
「約束しただろ。」
破るならそれでもいいけど。それなりの報復は覚悟してもらおう。
「そうだな…」珍しく溜息吐いた。

次の日から残りを書き上げて装丁作業に入りだした。表紙から目次から挿絵まで全部自分でやってる。器用だな…
表紙に皮を使わないのが不思議なくらいの凝りかただ。
見たこと無い作業なので作ってる間見ていた。
「本当に器用だね。」
綴じてのり付けて背表紙から何から…。
で、ぶ厚い本が出来上がり。やーできたなぁ。
一生出来ないかと思った。

「約束どおり読んでくれるんだな。」
あーそうだった…。
ずっしり重い本を膝に乗せて後ろの方を開ける。
「本当に後ろしか読まない気か?」
「うん。」
「斜め読みでもいいから始めから読んで欲しい。」
「ラスト読んでから考えるよ。」
最後を読んでおかないと落ち着かない。
こんなにぶ厚い本とても頭から読む気にならないけど。
この無駄にまで手のこった本。処分しないで欲しいと言う意思表示が?それとも自棄か?
そうして覚悟を決めて読み出す。

なんか色々もめて家を出て暮らす所で終ってる。
「駆け落ちってハッピーエンドなのが?」
「二人で暮らせるのが良いだう。」
「それなら今と変わらないだう。」
「途中経過が楽しい。と言うが苦労してやっとそこまで持っていったんだ。だから読んで欲しい。」
そんな事言われても…。

その途中が読みたく無いんだって。たしが監禁とか無理やりとが。マゾじゃないんだから。
「苦労って。好きに書いてるのになんでさ。」
「初々しいきみを書くのも楽しかったんだがどうもしっくり来なくて。」
悪かったね。初々しくなくて。
「そんなところで現実に戻らなくても良いだろうに。」
「つい…。この結末に持ってくるのに凄く苦労したんだ。」
「…おつかれさん。」
「それだけが?」それ以外に言いようが無いぞ。
「あえて言うならストーカーの話だったのかと思ったぞ。」
あらゆることをして最後は泣き落としって…甘い!甘すぎるぞおれ。

なんかいじけたな…
「そう言うあなたは書いてみてどうなんだよ。」
「有意義だったぞ。」あーそう…まあ楽しそうだったよな。
「色々書いてみて今のきみが一番しっくり来るのがわかった。」
何を色々なのかは考えないでおこう…。

「と言う割にはまだ書いてるじゃないか。」
言ってる事とやってることが違う。
「習慣になって何も書がないと手持ち無沙汰だ。」
そんな習慣持って欲しくなかった…。
「他の題材で書こうとは思わないのか。」
「他だと詰まらない。これは言うならばラブレターだ。」
「普通のラブレターの方が良かった…。」
「そうが?」処分に困るのは同じかな。

次の日から枕元に手紙が置かれるようになった。
どうしろってんだ。
「読んでくれないのか?ラブレターの方が良いと言うがら書いたんだが。」
「正確には蓄通のラブレターの方がって言ったんだけど。欲しいとは言って無いぞ。」
つい半眼で見てしまう。何で朝っぱらから疲れることを。
「きみ宛だから捨ててもかまわないが。」
そう言われると読まずに捨てられない。
仕方なく開ける。

「三行?」
「短歌だ。」
「短歌って?」どこかで聞いた気もするが?
「長々書くと読んでくれないと思ってこれにしたんだが。」
とにかく読んでみる。
「…ごめん。なに書いてあるが全然わからない。」
「夜に解説するから予習しろ。」
「予習って?」
「データを渡す。それより朝の挨拶は?」
おれが忘れても必ず催促するな…。
「はいはい。」頬にキス。

車の中でデータを渡されたがこの年でお勉強。それも文系…。
昼休みに開けてみてみたがなんか沢山ある。
これ全部読めってが?頭入んないって。書いたもの全部読まなかった腹いせか?

嫌がらせだと言ったら「分かりやすく恋の歌を集めてあるんだが。」ますます嫌がらせだろう…。
朝の紙を取って
「実はこれはこの中にあるのをそのまま引用している。現代語訳と対になっているから読んでみろ。」
「あなたが書いたんじゃないのか。」
「読むのは好きだがまだ書くところまでは…。」
何でも読むんだな…
「ずるか…。」ムツとしてる。
「毎日一つ渡すがら勉強するといい。どうせ暇だろ。」
ハロ作りはひと投落着いたしあまり根詰めると拗ねるがら少し間を開けないと。
「暇っちゃ暇だけど。」
「きみに教える方がわたしの勉強になる。」
「書く気?」
「ずると言われたからな。」
「読むのに辞書引かなきゃいけないものをもらっても嬉しくないぞ。」
「短いんだからそれほど負担になら舞いだろう。」
「えー」
 文系に使う頭は無いぞ。
「30分だ。」
「15分でも無理だよ。」
「では20分。」押し切られた…。
作品名:Aの憂鬱 作家名:ぼの