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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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・・・あの時・・・、マチルダのロックアックス城に少人数で攻め入る事になった時、ヒオウもヒナタと共に行った。
ヒナタはナナミをそのパーティに入れなかった。
だがナナミはヒナタを守るのはあたしだから、と無理やりについてきた。

その時点でヒオウにはナナミの命の灯火が危ういのが感じ取れていた。
そう、まるで火が消えるまえの蝋燭のように、ナナミの灯火はジジジッという音すら聞こえるようであった。

だがヒオウは何も言わなかった。
・・・言ってどうなる?

もちろん言えばヒナタはナナミに当身を食らわせてでも同行を止めただろう。
他の誰がまさか、と信じなくてもヒナタはヒオウの言う事をまともに捕らえ、ナナミの同行はどんな事をしても阻止したはずだ。

・・・だがそれではヒナタの体がもたなかった。
ヒナタの命をコップに入った水になぞらえるなら、それこそ残量は一口、二口程度になっていただろう。

それほどまでに日々ヒナタの体からは生命力が失われていた。
もはや紋章の力を使わなくとも少しずつ、小さな穴から水がポタンと滴っていくようにヒナタの命は減ってきている。

それはわずかな量であるから、ヒナタ本人ですら気付かない程度であろう。
少し最近疲れがとれないなとぼやく程度。

だがヒオウには分かっていた。
何も言わず顔にも出さないが焦っていた。

はやく・・・はやく決着をつけなければ・・・もたない・・・。

そんな折の出来事。
死してなおヒナタを守りたいと願ったナナミの命はヒナタに注がれた。
ヒオウは紋章を通じてそれを感じた。

焼け石に水かもしれない。だがそれでも・・・。
誰も知らない、見えない出来事。

・・・ごめんね、ヒナタ・・・。
僕は何も言わなかった。そしてこれからも、言わない。

そっとヒナタの頭を撫でると、ヒオウはベッドから離れ、ヒナタのスカーフや自分の服を乾かす為に暖炉に火をつけに行った。

眠り続けるヒナタの目から涙が流れ落ちる。


・・・ごめんね・・・ナナミ・・・。
それでも僕は・・・前に進む。

お姉ちゃんがとても嫌がっていた事を、ジョウイとの決着をつける。

月に誓った決意。
平和な地。
それを求めることにこれ程多大な犠牲が必要だったなんてね、ジョウイ・・・。

僕のやり方が正しいとは言わない。
でも君のやり方が正しいとも思わない。


・・・ごめんね、ナナミ。ごめんね、ジョウイ。

でも、僕は・・・