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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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蜂起



「じゃあ、いってきまーす。手紙出すよ。んで前シュウが言ってくれたし、また帰ってくる。」

ヒナタはニッコリ手を振った。


あの戦争からもう15年近くたつ。
そしてヒナタが政治の表舞台から手を引いて1年。

それまでにハイイーストで動乱があったりと何やかんやで結局ヒナタが思っていたより長く王として君臨していた。
ようやく大統領制度を行うことを国民にも認めてもらい、惜しまれつつも引退した。

引退後は城内で普通の仕事(料理洗濯から道場での指導まで色々)をたまにこなしつつ平和に暮らしていた。


そんな折、グラスランドで何やらきな臭い様子が聞こえるようになってきた。
ただの小競り合いやちょっとした戦争ならヒナタは関わろうとは思わなかった。

だが、紋章がざわつく。
何やら紋章に関わりのある事態が引き起こりそうな予感がする。
なんだかとても気になる。

こうしてヒナタは初めて長旅に出ることになった。

にこやかに手を振るヒナタを少し寂しい気持ちでシュウとクラウスは送り出した。


城を出て暫くすると、ヒオウが道端の大きな石に腰掛けて手を振っていた。

「あ、ヒオウー。」
「ヒナタも紋章?」
「ヒオウも?何かねー気になるんだ。ヒオウ、一緒に行ってくれんの?」
「うん、勿論。」

2人はグラスランドにむけて歩き始めた。
最強の2人だけに進みも早い。

「カレリアから山を越えればグラスランドだよ。」
「へえ。それにしても賑やかなとこだなー。お、あれ、何何?」

ティントに立ち寄った後さらに進んでカレリアという街についた。

どうやらここは傭兵が集まる所らしい。猛者共がうようよといる街で子供2人だけの旅人というのは珍しいようで、少し目立っていた。
ヒナタはそんな事気にも留めず、わくわくと夜店のような店を見てまわる。
ヒオウはため息をつきながらもそんなヒナタに付き合い、一緒に見てまわった。

「とりあえず宿をとるがてらちょっと情報収集にいってくるから。ヒナタはここでジュース飲んで待ってて。」
「え、なんで。だったら僕も行くよ。」
「いい。じゃあね。」

あのテンションのまま動き回られて人と話をされてもこっちが疲れる。
ヒオウはそう思い苦笑しながら手を振って、向こうにある宿屋受付に行った。暫く話していたあと、宿屋兼酒場から出ていった。

「行っちゃった。ま、いっかあ。あ、これ美味しい。シュワシュワしてる。」

ヒナタがジュースを飲んでボーっとしていると新しく入ってきた男2人がヒナタに気付き、近づいてきた。

「よお、1人かい?」
「?今はね。なあに?」
「あれ?あんた男?」
「・・・失礼だなー。もちろんそうに決まってんだろ?」

ヒナタはムッとして答えた。男2人はニヤニヤしながら続けた。
「いや、あんたがあんまり可愛いからさ、女の子だとばかりね。」
「そりゃ僕は可愛いけど。」
「で?いくらだい?」
「は?何が?このジュースのこと?」
「またまたとぼけちゃって。あんたみたいな子供がこんなとこに一人でいてそんなんじゃねえって訳ねえよな?」
「だから何?」
「交渉かい?まああんたならこれくらい出してもいいがな。」

男の1人が手で示した。

ヒナタは首を傾げる。
こいつらは何を言っているんだ?この辺の何か意味のあるやりとりなのか?

「・・・あのさあ、僕この辺って初めてで、まだよく知らないんだけど・・・。」
「お、そりゃまた初々しさあっていいねえ。で、どうだい?いくら?」
「・・・悪いんだけど、この子も僕も、そういうのじゃないんだよね。ただの旅人だから。それにこの子そういうの分からないから、やめてくれないかなあ?」

いつの間にか背後にヒオウがいた。
ここで揉め事を起こすのは得策ではないと判断したのかとてもおだやか言う。

「え?なんだよ、そうだったんかい。どうりで反応がもどかしいって思ったぜ。いや、悪かったな、忘れてくれ。」
「いいよ。じゃあね。ほら、おいで。」

案外悪い奴らという訳でもなかったようで、すんなりと悪びれつつ男2人は手を引いた。
ヒオウはニッと笑うとヒナタの手をとり歩き出した。

酒場を出るとそのまま階段を上り、手をつないだまま先程とった部屋に向かう。

「ちょ、待って、ヒオウ。さっきの何言ってたんだ?まったく意味分かんないんだけど?」
「あー・・・。あんなとこに一人にするんじゃなかったな。これじゃあ疲れても一緒に行ったほうが良かったかもね。」

ヒオウは部屋に入って荷物をときだした。

「それはいいからさあ、さっきあの人ら何言ってたか教えてよ。」
「・・・ヒナタは売春って知ってる?」

少し顔を顰めた後、ため息をついてヒオウが言った。
ヒオウに逆に聞かれてヒナタはんん?と首を傾げる。

「・・・。ああ、あれだろ、体を売ったり買ったりするやつだろ?何かHな事するやつ。」
「あー・・・、ん、まあだいたい正解かな。多分何するかは知らないんだろうけど。」

最後はボソッとつぶやく。
それが何?とヒナタが促す。

「さっきの奴らはヒナタにその売春の交渉をしてたんだよ。」
「・・・・・え、ええっ!?ちょ、マジで!?ぼ、僕男だけど!?聞かれて男だってちゃんと言ったし、向こうも分かった筈だしっ!?」
「別に男同士でも出来るんだよ、そういう行為は。どっちでもいいって奴もいるし、逆に男でないとだめだって奴もいるくらいだから。」

ヒナタはポカンと口をあけていた。

・・・そういえば以前ヒオウがナナミクッキーを食べておかしくなった時、シュウにヒナタと恋人だとふざけた話を吹き込まれた時。
後でヒナタが男だって分かっても、じゃあどっちでもいける口だったんだなと、おかしくなっていたヒオウは納得していた。

あれはヒオウがおかしくなっていたからだと思っていたが、世間では本当にいるんだ!?っていうかそういう行為って、何すんだろ。
とりあえず話の流れからいってHな事なんだろうけど・・・。
男女の間でさえ実際何をするのか分からないってのに更になぞが増えてしまった・・・。

明らかになぞだという顔をしているヒナタをヒオウは苦笑しつつ見ていた。
そりゃ女装も平気だろうし、男のファンがいたとしても気持ち悪がる筈もないよな、と昔ヒナタが女装していた時に言っていた事を思い出していた。

本当に何も知らないんだからね・・・。

「さ、そんなことよりも、大変な話あるから。ヒナタ、カラヤクランがどうも焼き討ちにあったらしい。」

すっと表情を切り替えてヒオウが言った。