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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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「あー成る程。分かった。」
「・・・そう。じゃあ今からヒナタにキスするよ?大丈夫?」
「んー・・・実験だよな。・・・よし、分かった。大人しくしてる。」
「じゃ、目、瞑って、口は少し開けててね。」

そう言うとヒオウはヒナタに向き合って肩を持った。
そしてヒナタの唇に自分の唇を軽く重ねた。

「・・・ん・・・」

そしてそのままそっと耳元にキスをし、首筋に移動させる。

ヒナタはギュッと目を瞑ったままだがヒオウの唇が動くたびにビクンとした。
ヒナタの口からため息のような息が漏れる。

しばらくしてからヒオウがそっと離れた。

「・・・どうだった?」

その声でヒナタはぼんやりと目を開けた。

ど、う、だった・・・どう、だった・・・?
あ、そうだった。

「あ・・・うん・・・。えっと・・・その・・・。あ、ドキドキ、してる。うん、僕何かドキドキしてる。」

そう、とヒオウはニッコリした。

「なんとなく分かってくれた?でもヒナタ。こういう事は普通はどこでもする訳じゃないから。シーナはあれ、特別だよ?勿論誰彼とするものでもないからね?」
「わ、分かってるよそんくらいはっ。」

ヒナタが赤くなって言った。
ヒオウはニコリとして立ち上がった。

「じゃ、そういう事だから。行こうか、食後の運動がてらに久しぶりに手合わせでもしない?」
「え?あ、おうっ。今度こそ僕が勝ってみせんだからなっ。」
「ほんとにー?ヒナタは詰めが甘いからなあ。」

そう言いながら2人は城を出て平原まで行った。
ここなら誰の迷惑にもならず、邪魔されず、思う存分戦い合える。

傍から見ればあまりの動きの速さと圧倒的な強さ、凄まじさに恐れをなし、本当にただの手合わせかと疑問に思ったであろうが、誰も見るものはいない。
もし誰か2人を伺うものでもいようものなら、2人は逸早くそれを察して手加減していたであろうと思われる。

見ている者が危険だし、1番の理由は戦いに参加するつもりがないので誰にもこうして本気でやり合うところを見られたくないというものだった。

「っくそっ。何でいつまでも勝てないんだよーっ。」

いい加減時間もたったし帰ろう、となって城に戻る途中、ヒナタはずっと悔しがっていた。

「ヒナタもどんどん強くなってるけどね、僕だって鍛えてない訳じゃないから。経験の差は縮まないよ?」

ヒオウがニコリとして言う。
それを聞いてチェッとむくれていたヒナタだが、ふいにあれっ?という顔をして立ち止まった。

「?どうかした?」
「・・・経験で思い出しちゃった・・・。・・・今更気付いたんだけどさあ、僕、もしかしてあれ、ファーストキス!?」

青くなってヒナタはヒオウを見た。

基本的な事は何も知らないくせにつまらない事ばかり知ってるんだからとヒオウは思った。

「・・・ホント今更だね?まあ僕に聞かれてもって感じだけど、ヒナタの場合そうだろうとしか思えないね。」

うぎゃあと騒ぎ立てるヒナタ。

「どうしたの?何がショックな訳?」
「そりゃそうだろ!?ファーストキスが、ファーストキスが実験台だなんてっ。」
「・・・そこ?」

相手が男だったからとか恋人じゃないからとかそういった答えでも返ってくるのかと思いきや実験が最初の経験だった事にショックを受けているところが何ともヒナタらしいと、ヒオウは呆れつつも微笑ましく思った。

「うう・・・。・・・そういやヒオウってさあ・・・やっぱ、ある訳?」
「何が?キス?」
「・・・キスもそうだけど、もっと、その、アレとか・・・。」
「アレ?・・・ああ、そうだね、あるよ?」

ヒオウにサラッと返されポカンと口をあけているヒナタ。

「ほら、帰るよ?そろそろ暗くなってきたし。お風呂入りに行くよ。」

ヒオウはまるで何事もなかったかのように城に向かって歩き出した。

「え?あ、ああ。ちょ、待ってよ。」

とりあえずヒナタも慌てて後をついて行く。

・・・今あるって言ったよね?
あまりにも薄い反応なので聞き間違いかと思ったが、やっぱり言ったよなとヒナタは思った。
だけど更に聞くには何だか聞き辛い。何となく今日はこういった話はここまで、と線引きされたような感じがする。

確かに僕らは実際の年齢は30を超えているんだし、普通なら一通りの経験くらいあるよなあとヒナタは思った。
でもなぜか今まで一緒にいたヒオウが遠い人のような感じがした。

今までどんな人と経験したんだろう?
今まで何人くらいと経験したんだろう?
相手はやっぱり女性、だよね?
前にカレリアでヒオウは男同士でも出来るとは言っていたけど・・・。そういや男同士ならどうするんだろう・・・?

色々な事が気になってきたけど、それでなくても今日、ヒオウは沢山教えてくれた。
説明するの難しそうだのに丁寧に教えてくれた。
これ以上聞くのも悪いな、と思いヒナタは新たな疑問はとりあえずそのままにしておく事にした。

自分の後ろを考え事をしながら、でも何だかふっきれたように歩いてきたヒナタをヒオウはそっと伺った。
これ以上聞くのを諦めたのだろう。
どのみち今は自分もそれ以上話をするつもりもない。
今のところはこれくらいで十分だろうと思っていた。

・・・これ以上、大切にしている自分だけの宝物にこれ以上の血の通った話や経験を、するつもりもさせるつもりもヒオウはなかった。