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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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妄執



ルックとの対決が終わった。


今最後に戦った者達が崩れ始める前に脱出をしている所だった。
ヒオウとヒナタは誰にも見つからないようにその場所を逆走していた。

そうして目的の場所にたどり着くと、そこには倒れているルックとセラの姿があった。

「ルックッ」
2人は駆け寄った。
そっと抱き起こしてみると虫の息だが、まだ生きているようであった。

「ルック・・・。バカルック・・・。ほんとにこれで良かったの・・・?」

ヒナタが泣きながら呟くように言う。

「ヒ・・・ナ、タ・・・。・・・ああ・・・。良かった、んだ・・・。」
「でも、やっぱり僕は辛いよ・・・。ねえ、もう生きるのは嫌?生きていたくない?」
「ヒナタ、何を・・・」
「・・・どのみち・・・僕は・・・もう・・・」
「でも、もしでも生きれるなら、ねえルック、助かるのなら生きていたい!?」

ヒナタは必死になってだんだん意識が朦朧としていくルックに聞いた。

「・・・そ、う・・・だね・・・や、りな・・おせる・・・な、ら・・・」
「ヒナタ?」

ヒナタは目を涙でいっぱいにさせルックを抱きしめたままヒオウを見た。

「ヒオウ、力を、力を貸してっ?」
「力?ヒナタ、何をしようっていうの?」
「僕の紋章とヒオウの紋章が僕に言ってきてるんだ。今なら、今なら間に合うかもしれないってっ。もう、セラはもうだめだけど・・・ルックなら・・・ルックならまだっ・・・。だからヒオウっ、力を解放させて?手を、手をかざしてっ?」

ヒナタの剣幕に押され、訳が分からないままヒオウは手を上に上げた。

すると急に心臓がドクンと鳴ったかと思うと右手が熱くなった。
ヒナタを見ると、ヒナタも手を上げており、自分のように右手が輝いている。

「くっ!?」

そして何もしていないはずの紋章から、何か膨大な力が放出されたのが分かった。
その力の衝撃と光で、ヒオウは一瞬気が遠くなりかけた。

「・・・な、何だったんだ・・・?今のは・・・ヒナタ?・・・ヒナタッ!?」

見るとヒナタはルックに覆いかぶさるように崩れ倒れていた。

ヒオウは慌ててヒナタを抱き上げる。
だがヒナタは意識がなかった。

ヒオウは青くなり慌てて脈を確認すると、脈はひどくゆっくりだが動いていた。
とりあえず死んではいないと分かり多少はホッとした。どうやら気を失っているようである。
多分ヒナタの紋章の方がより大きな力を放出したのであろう。

とはいえ息も浅く、微動だにしないヒナタ・・・。

「・・・ヒナタ・・・。・・・ルック・・・。そういえばルックは・・・?」

ヒナタをそっと横たわらせると、ヒオウはルックを抱き起こしてみた。
相変わらず青白い顔色だが、どうやらまだ生きている様子だった。

いや、それどころか先程より生命の力が感じられる。

「・・・ルック・・・?」
「・・・う・・・ん・・・」

ルックがゆっくりと目を開けた。

「・・・ルック・・・。」

暫くするとルックは驚く事に自ら起き上がれるようになった。

「これは・・・いったい・・・?」
「・・・僕も信じられないけど・・・どうやら君とヒナタの紋章の共鳴みたいだね・・・。まるで強力な組み合わせ魔法みたいに・・・。はっきりとは分からないけど、ヒナタが自分と君の紋章の力を引き出して僕に注いでくれたみたいだ・・・。」
「・・・ヒナタが・・・?いつの間にそんな力を・・・?そ、それでヒナタは大丈夫なんだろうか・・・?」
「・・・多分君より力を使って今は消耗しすぎてるんだと思う。」
「・・・でも・・・僕の力まで使って・・・まさか・・・まさかコレがヒナタを・・・」

ヒオウはソウルイーターの力を普段は何とも思っていなかった。

魂を狩るというのも既に死んでしまった者からだから、と気に留めていないつもりだった。


だが・・・だがもしコレがヒナタの魂を狩ってしまったら・・・?


死んだ者の魂を狩るだけだと思いつつも、ヒオウはやはりどこかで危惧していた。
もし。
もし大切な人の魂をやはりとられてしまったら?
紋章の呪いなんてと思いつつも、もし大事なかけがえのない人の命を奪われたら?

もし、ヒナタが奪われてしまったら?

そんな事は耐えられない。
そんな事はあってはならない。

なら大切な人でなければ・・・?
いくら大事だといえどもそれがモノであれば・・・?

だったら僕はヒナタをモノと見なそう。
これはいくら大切でも人ではない。
大事な、大事な宝物。

そうやって日々を重ねてきた。
そうやってヒナタを扱ってきた。

コレハ人デハアラズ。

だが、いくら教える為とはいえ、口づけをしてしまった。
宝物にだってキスくらいはするだろう。そう思った。

だが、キスは暖かかった。
人の、血の通った人の感触が伝わってきた。

ヒナタの、大切なヒナタの感触が伝わってきてしまった。

それでもモノ扱いをしてきたつもりだった。
だが紋章にはごまかしとしか写らなく、そしてやはり呪いがあったなら・・・?

そして今、力を使ったせいとはいえ、ヒナタは目を覚まさない。
脈はある。
だがこのまま目を覚まさなかったら・・・?

ヒオウはますます青くなった。それは傍で見ていても痛々しいほどだった。

「・・・ヒオウ・・・。・・・僕は・・・断言は出来ないけども。でも君の紋章はヒナタの命を奪う事はないと思う。」
「・・・なぜ・・・?」
「昔・・・、ヒナタが自らの不完全な紋章に命を削られていたあの頃、よく倒れていたのを覚えているかい?」
「・・・忘れる訳がない。」
「1度ベッドに横たわるヒナタを看ながら話をしていた時、君は思わず自分の紋章のある手を握り締め祈っていた。多分ヒナタを救いたいといったような事じゃないかと僕は思った。その時君の紋章から何とも不思議な力がヒナタにいったように思えた。」
「・・・不思議な、力・・・?」
「そしてすぐにヒナタは目を覚ました。すぐにまた眠りに落ちていったけどね?その時、僕にはソウルイーターとヒナタが言ったように聞こえた。」