囚われの王冠
武成王に就いた祝いだと随分酒を呑んだある夜、酔った勢いに任せてかそれとも彼であるから安心したのか、その子供の存在を零してしまったのだ。初めは本当にそんなものがいるのかと疑っていた彼であったが、まあお前みたいな奴もいるしなと豪快に笑い、もし本当ならば会わせてくれとせがんだ。思わず酔いを醒まして彼に話したことを後悔したが、一応奴も要職に就いたのだしと了承した。
そして会わせてやはり、後悔した。
彼は、笑っていた。
以前も自分と話している間皮肉気だったり微笑であったりと笑みは浮かべていたが、声に出して大笑いしているのを初めてみた。
武成王が自分の武勇伝や家族の話をしている間、息も絶え絶えに胸のあたりを叩きながらも尚笑い洋々としている外見相応の彼を見て、今まで自分が彼にしてもらってばかりで何もしてこなかったのをひどく、ひどく後悔した。
だから帰りに武成王がまたきていいか、次は自分の息子らを連れてきてもいいかと尋ねた時も、何も答えず、ただ頷いた。
軟禁所は、とても、とても賑やかになった。
だから一旦自分が朝歌を離れなければならなくなったときも、この男になら任せられると安心して朝歌と此処の留守を託し、出て行ったのだ。
そして。
自分が離れている間に、女狐が都に忍び込んでいた。