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FF7ヴィンセントのお話

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【10.邂逅】


 ヴィンセントは目を閉じて静かに佇んでいた。
 そこは前と変わらず淡い光に照らされていた。その光は心地よくヴィンセントを包み込んでいる。
 ふいに声がした。
「ヴィンセント」
 振り返るとルクレッツィアが立っている。
「まだ、ここにいてくれたのだな。来るつもりはなかったのだが、どうしても君に伝えたかった、セフィロスのことを」
「あの子はライフストリームに還ったのね」
「ああ・・・優しい子だったよ。私の命を助けてくれた。そして星をも救ってくれたよ」
「そう・・・よかった・・・」
 ルクレッツィアはささやくようにつぶやく。声にいつものはりがない。
 すっと幽霊のようにヴィンセントに背を向けて歩き出す。
「ルクレッツィア?」
「ジェノバは消え去ったわね。連鎖的に私の中のジェノバも消えた・・・これで私もセフィロスのところへ行くことができる・・・」
 ヴィンセントの顔から血の気が引く。

・・・引き留めてあげて!・・・・彼の頭の中に響く少年の声。
「待ってくれ!」
・・・素直になって!・・・・・・
「愛しているんだ!ルクレッツィア!」
 彼は叫んでいた。
 あの日に言うべきだった言葉を・・・

 ルクレッツィアの動きが止まった。ゆっくりとヴィンセントを振り返る。

 叫んだ後でヴィンセントは気がついた。自らに課せられた罰に。
 咄嗟に彼女に背を向け、つぶやいた。
「・・・すまん。ただ・・、せっかく君の中のジェノバは消えたのだ、死に急ぐことはない。生きるんだ、セフィロスもそれを望んでいる」
「ヴィンセント・・・初めて言ってくれたよね、愛してるって。どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」
 今にも泣き出しそうな声だ。
「すまない・・・そうだな、遅すぎたな」
 そう、もう遅すぎたのだ。
 ルクレッツィアがヴィンセントの背中にすがりついた。
「ヴィンセントのばかあ!私だって、ヴィンセントのこと好きだったのよ!好きだったんだから!お願い、これからはずっとそばにいて!」
「それは・・・・・・もうできない」
 彼はうつむく。
「どうして?」
「私はもう人間ではない」
「ううん、人間よ。全然変わってないわ」
 ヴィンセントはルクレッツィアから離れて振り返った。
 おもむろにマントを脱ぎ、そしてゆっくりと意識をカオスへと向けた。おぼろげに彼の身体が光り出す。
「瞳の色が変わっただけではない。すべてが変わってしまった」
 意識をのっとられないようにあくまで慎重に、さらに集中した。
 服が裂け、黒紫色の肌と紅い翼が現れる。漆黒の髪から突き出る二本の角。顔と髪だけにヴィンセントが残った。
 半ばカオスと化したヴィンセントが静かに話す。
「これが私の本当の姿だ。いや、真の姿はもっとおぞましい・・・」
 ルクレッツィアは無言で近づいた。彼は首を振り、悲痛な表情で後ずさった。
 かまわずに彼女は黒紫色の胸にとびこんだ。
「・・・・!」
「ごめんね、私のせいだよね。でも、ヴィンセントはヴィンセントだよ。何者であっても、どんな姿であっても、私の大好きなヴィンセントよ。お願い、どこにも行かないで、ずっとそばにいて」
 そう言うと彼女は思いっきり背伸びをし、その美しい悪魔に口づけた。
 その瞬間、再び彼の身体が光り、元の姿に戻った。
「まあ、キスすれば大丈夫じゃない」
 ルクレッツィアはあどけなく笑った。
 ヴィンセントはもう彼女を抱きしめる以外のことはできなかった。
 彼女は彼の温かい胸に顔をうずめてつぶやいた。
「ヴィンセント、私をジェノバから解放してくれたのはあなただわ、今度は私がきっとあなたを元の身体に戻してあげる」
「ルクレッツィア・・・」
 彼女は顔を上げて、弾むように言った。
「だって、私生物学者よ。任してちょうだい!だから、ヴィンセントも私のこと守ってね、たのむわよ!」
「ああ、守る・・・ずっと」
 そう言うと、彼は再び彼女を強く抱きしめた。
(ごめんね、セフィロス・・・私、あなたのところへは行けなかったわ・・・)
 目を閉じるルクレッツィアに透き通った幼い少年の声が響いた。
・・・いいんだよ母さん、また会えるから・・・
 はっとしてルクレッツィアは目を開いたが、遠くで滝の音が響くだけだった。


 2年後、ミッドガルではメテオ騒動のため、いまだ復旧作業が盛んであるものの、それ以外の街や村では何も変わることなく、穏やかな日々が続いていた。
「もうっ、クラウドったら!せっかくの新婚旅行だってのにどうしてミディールの温泉なわけー。私、ゴールドソーサーに行きたかったのに!!」
「まあ、いいからティファ、ちょっと僕についておいで」
 そういうとクラウドはチョコボを走らせた。しぶしぶティファがついていく。
「あ、あれは・・牧場?こんなところにあったかしら?」
 2人はこじんまりとしたチョコボ牧場にたどり着いた。
 すぐそこに見えている柵の傍らで一人の青年がチョコボに餌をやっている。
 カントリーシャツにジーンズ、背はすらっと伸びている。
 短い黒髪が風にさらさらとそよいでいる。
「あのー、すみません」
 クラウドが青年に声をかけた。
 青年が振り向いた。安らぎに満ちた褐色の瞳、しかしそれは確かに昔の懐かしい顔だ。
「えー、もしかしてヴィンセントー?」
 ティファが驚きの声をあげる。
「やあ、ティファにクラウド、久しぶりだな」
「ほんとにヴィンセント?!生きてたんだあー、もう、クラウド!どうしてもっと早く教えてくれなかったのよ!私、もう死んじゃったと思ってあきらめてたのよ!」
「すまないな、ミッドガルは混乱していたから、クラウドたちともなかなか連絡が取れなかったんだ。ようやくこの前、クラウドに連絡がついた」
 ヴィンセントが代わりに答えた。
「そう・・、ああでもよかったヴィンセントちゃんと生きてて・・」
 ティファの顔に安堵の表情が広がる。
「ヴィンセント、元気そうだな」
「遠い所からありがとう」
「ミディールまで来たんでね。ちょっと寄って見ようと思って」
「そうか、では少し休んでいくといい」
 そういうと彼は二人を案内した。
「へー、ヴィンセント髪切ったんだあ。なんだか前よりも若く見えるね。それになんか雰囲気が変わったような気がするんだけど・・・」
 ティファがまじまじとヴィンセントを見つめている。
 ヴィンセントは微笑んで、二人を家の中に招き入れた。
「ルクレッツィア、お客さんだ」
 マタニティ姿の女性が出てきた。
「あら、あなたは・・クラウドさんですね?よく来てくれました」
「ルクレッツィアさん、お久しぶりです。こいつはティファです」
「初めまして、ルクレッツィアさん、ティファです」
「初めまして、あなたのことも主人から聞いていますわ。ゆっくりしていって下さいね」
「そっか、ルクレッツィアさんと一緒だったんだね。よかったね、ヴィンセント」
「ありがとう、ティファ。ところでそういう君たちはどうなんだ?」
「うふ、実はついこの前、結婚したのよ。それで、ここへは新婚旅行で来たのよ」
「さっきまで、文句言ってたのは誰だったかな?」
「もう、クラウドの意地悪!」
作品名:FF7ヴィンセントのお話 作家名:絢翔