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FF7ヴィンセントのお話

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【2.ウェンディングベル】


 その日、静かな村の教会ではしめやかに挙式がとりおこなわれていた。
 少数ではあるが、研究仲間達の祝福を受ける新郎新婦の笑顔は限りなく晴れやかだった。
 ニブル山にて発見された古代種ジェノバのために神羅製作所特別研究チームが組まれ、この村に派遣されたのがちょうど2年前。研究員たちは神羅屋敷に住み込む形で日夜ジェノバの研究に励んでいた。
 プロジェクトチームの最高責任者がガスト・ファレミス博士。これまでに数々の功績を残しており、神羅創立始まって以来の一大プロジェクトをまかされるのも当然のことだった。

 本日の主役の一人である宝条はガスト博士の右腕ともいえる新進気鋭の若手研究者。色白で線の細い小柄な男だが、その繊細な顔つきが好青年という印象を与えている。実際、仕事も優秀にこなすので、ガスト博士の絶大な信頼を得ていた。しかし、その裏に隠されている狂気にはそのとき誰も気づかなかった。

 そしてもう一人の主役、ルクレッツィアはガスト博士の助手として紅一点この村に赴任した。艶やかな淡い茶色の髪とマリンブルーの瞳、普段から化粧気はほとんどなかったが、素朴な美しさを兼ね添えていた。彼女も優秀ではあったが、それ以上に研究にかける情熱がガスト博士のお気に入りの部分であった。悪く言えば、研究にのめりこむと周りが見えなくなってしまうわけだが、陽気な彼女はいつもパワーと愛嬌をふりまいて研究仲間たちを盛り上げていた。

 華やかな参列から少し離れて、その場にはとても似つかわしくない黒スーツ黒ネクタイの男が1人たたずんでいた。彼の名はヴィンセント・ヴァレンタイン。神羅製作所総務部調査課、通称タークス所属。スパイ、誘拐、策略、殺しなど汚い仕事は何でもこなす裏組織である。1年ほど前より、ニブルへイム付近でモンスターが出没するという知らせを受け、研究者たちの護衛役としてこの村に赴任。他の仕事と掛け持ちしながらも護衛役を果たしてきた。細身の長身、漆黒の髪、宝条に劣らないほど肌は白く、美しく整った顔立ちは一見タークスとは結びつかない。しかし、そこに光る褐色の瞳だけは鋭く研ぎ澄まされ、タークスとして幾多の修羅場をくぐり抜けてきたことを物語っている。
 そんな心を持たないはずのヴィンセントはとまどっていた。幸せそうに並んで歩く新郎新婦が視界に入ったその瞬間、今までに覚えたことのない苦痛を感じた。
(この感覚は一体・・)
(おまえは彼女を愛しているのか?)
(そうかもしれない・・)
(なぜ、あのときに言わなかった。後悔してるのか?)
(いや、後悔はしていない)
(もっと素直になったほうがいいぞ・・)
 彼ははっとしたように参列から目をそらし、周りの状況に神経を集中した。

 澄み切った高い空にチャペルの鐘の音が響いていた。

作品名:FF7ヴィンセントのお話 作家名:絢翔