二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

FF7ヴィンセントのお話

INDEX|3ページ/14ページ|

次のページ前のページ
 

【3.ジェノバ・プロジェクト】


 いよいよ、その日が来た。ジェノバ細胞をルクレッツィアに移植する日だ。彼女は妊娠5ヶ月だった。今、ニブルへイムは一面の銀世界、毎日厳しい寒さが続いていたが、神羅屋敷の中はハイパワーな暖房設備により、冬であることを忘れてしまうほどの陽気であった。
 移植が待ち遠しくて仕方がなかったルクレッツィアはその日異常に興奮していた。
 執刀するのは夫の宝条、手術まであと3時間。宝条の研究室では着々と準備が進められている。ルクレッツィアは神羅屋敷の廊下でそわそわとその時が来るのを待っていた。
 そこへ、外の見張りからヴィンセントが戻ってきた。コートの雪を払う彼にルクレッツィアが話しかけた。
「外は寒かったでしょ。見張りご苦労さま。 温かいコーヒー入れてあげるわ、私の部屋に来る?」
「今日はやけにご機嫌だな。何かいいことでもあったのか?」
「いいことはこれからよ。ずっとこの日が来るの待ってたんだから。今日は歴史的な日になるのよ。未来のスーパーヒーローが誕生するんだから」
「どういうことなんだ?それは」
 怪訝な表情のヴィンセントが尋ねる。
「あ、しまった。これ内緒なんだけど、ヴィンセントには教えてあげるわね。今日、私にジェノバを移植するのよ。そして母体を通じて赤ちゃんはジェノバと融合し、完璧な生命体になるわ。だって、何もかも人間を超越しているジェノバよ。すごいでしょ」
 ヴィンセントの顔色がさっと変わった。
「お前、正気なのか?得体のしれないものを移植するだと!何考えているんだ」
「何よ!あなたはジェノバのこと何もしらないくせに!ジェノバはすごい生命体なのよ!」
「ちょっと、来い!」
 そう言うと、ヴィンセントはルクレッツィアの腕を引っ張って研究室へ駆け込んだ。準備に追われる宝条が振り返る。
「これはこれは,、タークス風情がこんなところに何の用かな?」
「話はこいつから聞いた。人体実験だって?どういうことなんだそれは。しかも彼女は妊娠しているんだぞ。正気の沙汰とは思えない、反対だ。すぐに中止しろ」
「おやおや、なぜそのようなことをタークスなんぞに指示される必要があるのだ?しかも彼女は私の妻だよ。君の妻ならば気持ちを判らなくもないがね。それに何よりも今回の実験は彼女自身が望んだことなのだよ。ねえ、ルクレッツィア」
「ええ・・・」
(だって・・私はこのためにあなたと別れたのよ・・・)
 彼女のせつない瞳がヴィンセントを刺す。
「そういうことだから、部外者には出ていってもらいたいものだな。手術の準備も忙しいし、あなたの相手をしている暇はない。あなただって仕事があるでしょう」
 返す言葉を失ったヴィンセントは無言で部屋を出た。ルクレッツィアが後を追ってきた。
「ねえ、なぜそんなに怒るの?これはすばらしいことなのよ。あなたにはわからないの?」
 無表情に振り返ったヴィンセントはぽつりと聞いた。
「ルクレッツィア、そうすることでお前は本当に満足なのだな?」
「ええ、そうよ」
 彼女はきっぱりと答えた。
「そうか・・それならば何も言わない。好きにすればいい」
 そういうと彼は屋敷の護衛のため再び吹雪の中へ出ていった。

「手術は成功だよ。ルクレッツィア」
「ありがとう、あなた・・」
「それにしてもこんな最高機密をいとも簡単にタークスなぞに話してしまうとは口が軽すぎますよ」
「ごめんなさい、これからは気をつけますわ」
「ま、過ぎてしまったことは仕方がない。所詮あの男もただのタークス。我々の研究を邪魔する権限など全くないから、大丈夫でしょう。じゃあ、ルクレッツィア、あとは元気な赤ん坊を産んでくれるようよろしく頼みますよ」
「ええ」
 それから5ヶ月後、彼女に男の子が産まれた・・・。赤ん坊はセフィロスと名付けられた。
 ジェノバが古代種ではないことが判明したのはそれからまもなくのことであった。

「なんと言うことだ。ジェノバが空から落ちてきた厄災とは・・・。あれはただの魔物だったということか・・」
 青ざめたガスト博士が頭を抱える。
「何をうろたえているのですか?博士」
 宝条は平然としている。
「宝条くん、我々はとんでもないことをやらかしてしまったようだ。セフィロスは恐ろしい厄災となるかもしれん・・。即刻このプロジェクトは中止しなければ・・」
「何をおっしゃるのですか?博士。ジェノバが何であろうと究極の生命体ですよ。そしてそれを引き継いだセフィロスこそ我々の最大の成果。そう簡単に手放すわけにはいきません。それにプロジェクトを中止するということはセフィロスを殺すということですよ。博士、あなたは本気でそんなことをおっしゃるのですか?」
「いや、殺さなくても普通の人間として育てれば大丈夫だ・・・。実験による刺激がよくないのだ・・」
「いいえ、殺さなければ、いずれジェノバは覚醒する。どうせ覚醒させるなら最良の状態で覚醒させるのが我々の務めでしょう」
「宝条くん、正気かね?我々は得体のしれない魔物を生み出そうとしているのだぞ」
「もう、たわごとはそれくらいにしていただきましょう」
 ガスト博士に向けられる銃口。宝条が薄ら笑いを浮かべる。
「ここから先は私に任せてもらいましょう。やる気のない科学者はここにいる必要はありません。どこへでも行くがよろしい」
「・・・、何が起こっても知らないからな・・」
 そう言い残すとガスト博士は研究室を出ていった。
 そして村からも消えた。

 数日後、宝条は研究員たちを集めた。
「ジェノバプロジェクトの方もかなり一段落しており、みなさんはできるだけ早急に本社に戻るように。本社からも命令が出ています。ファレミス博士は先に本社に戻りました。私は後片づけもありますので、もうしばらくここに残ります。よろしいですね」
 研究員たちは突然のことで驚いたが、特に誰も彼を疑わなかった。ジェノバプロジェクトの人体実験を知っていたのはガスト博士と宝条とルクレッツィアだけだったし、ジェノバが古代種ではなかったことも他の研究員たちが知るところではなかった。また、ルクレッツィアもそのことは知らなかった。

 神羅屋敷、宝条夫妻の一室。
「ねえ、どうしてみんな本社に戻ることになったの?ジェノバプロジェクトはどうなるの?なぜファレミス博士だけが先に本社に戻ったの?」
 ルクレッツィアが夫に尋ねる。
「君に話す必要はない。君もさっさと本社に戻りなさい」
「あなた、セフィロスが産まれてから、冷たくなったわよね。ねえ、それよりそろそろセフィロスに会わせて。私もセフィロスのことをいろいろ知りたいわ」
「それはできないね。君はもう用済みだ。この研究からも手をひいてもらおう」
「あなた、それはどういうことなの?お願い、セフィロスに会わせて」
「ファレミス博士はとっとと逃げた。お前にももう用はない。さっさとどこかへ行け!」
「逃げたってどういうことなの?」
「うるさい女だ。はっきり言わせてもらおう。お前はセフィロスを産むためのただの道具だったということだ。すぐにでも離婚してやる。だが、セフィロスだけは渡すわけにはいかないな。それがわかればどこへでも行くがいい」
 そう言い捨てて宝条は出ていった。
作品名:FF7ヴィンセントのお話 作家名:絢翔