FF7ヴィンセントのお話
神羅屋敷の一角でルクレッツィアは泣いていた。そこをちょうど通りかかったヴィンセントは驚いた。彼女が泣くなど彼には想像できなかったからだ。
「一体、どうしたんだ?ルクレッツィア」
「あ、あは、ヴィンセント。びっくりしたじゃない。ん・・・ちょっとね。愚痴聞いてくれる?」
「ああ・・・」
「うちの旦那ったらね、最近とっても冷たいの。セフィロスが産まれるまでは結構優しかったのよ、あれでもね。でもセフィロス産まれてから、全然だめ。何か人が変わったみたい・・・それにあの人、実はとても恐ろしい人よ・・・この前、偶然あの人の机のレポート見ちゃったの。あ、この話はやめとくわ・・・思い出しただけでも背筋が寒くなるから・・・ううん、あの人のことはどうでもいいの・・・やっぱりセフィロスに会えないのが一番こたえてるかなって感じかしら・・・」
「まだ、セフィロスには会ってないのか?」
「う、うん。会わせてもらえないの」
「それはおかしいな、君は母親だろ?」
「うん、でもだめみたい。実験が忙しいみたいだし」
「君だって科学者じゃないか」
「私には触らせてもらえないみたい・・・ファレミス博士もいないから反論できないのよ」
「ファレミス博士がいない?」
「うん、本社に戻ったんだって。みんな本社に戻るみたい・・・理由はわからないけど・・・私に何にも言わないで出ていくなんて、博士もひどいわ・・・あ、そう言えば旦那は逃げたとか言ってたけど、どういうことなのかしら・・・どっちにしても博士がいなくなってちょっと心細くって・・・ああ、でもヴィンセントに愚痴聞いてもらってだいぶんすっきりしたわ。ありがとね」
「本当に大丈夫か?ルクレッツィア」
「うん、もう大丈夫。ごめんね仕事中に」
「いや、別にかまわないんだが・・・」
ヴィンセントから怪訝な表情は消えなかった。
その夜遅く、誰もいない研究室に忍び込んだヴィンセントはそこにある端末のキーを懸命に叩いていた。
そして、ついにディスプレーに浮かび上がった内容を満足そうに眺めた。
「なるほど、そういうことか・・・」
「本社からの回答」
・・・・ジェノバプロジェクトにおける人体実験の実行可否については会社にとって有益かどうかが不鮮明なため、判断を保留する。さらに調査をした上で実行許可を出すものとする。
・・・・・・・・・
「緊急要請事項」
・・・調査の結果、ジェノバは古代種ではないことが判明。ジェノバプロジェクトは会社にとって不利益を起こす可能性が高いため、プロジェクトの中止を要請する。研究員達は至急本社に戻るように指導願いたい。
・・・・・・・・・
作品名:FF7ヴィンセントのお話 作家名:絢翔