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FF7ヴィンセントのお話

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【4.悲劇】


 数日後、ルクレッツィアが倒れた。研究員の1人が気づいて部屋に彼女を運んだが、本社に戻る準備が忙しくすぐに部屋を出ていった。宝条は研究室にこもったまま、全く戻って来なかった。
 夕方になり、すでに他の研究員たちは本社へ戻るべく村を出ていた。
 ルクレッツィアの部屋にヴィンセントがやってきた。
「ヴィンセント・・・」
 ルクレッツィアが微笑む。
「・・あ、倒れたときいたものだからちょっと様子を伺いに来た。大丈夫か?」
 ちょっと決まりが悪そうに話す。
「ええ、しばらく寝ていたからだいぶん楽になったわ。異種の細胞を移植したんだもの、ちょっとした拒絶反応よ。時々あるの。でも、もう大丈夫よ」
「私ももう本社へ戻らなければならなくなった」
「え、ヴィンセントも行ってしまうの?」
「ああ、ついさっき連絡があって・・・君はずっと一人なのか?宝条はどうしている」
「あの人は相変わらず、研究室よ。でもいいの、あの人のことなんか。それよりも・・・」
「セフィロスか?」
「うん・・・やっぱりあの子に会わないとだめみたい・・・何でこうなっちゃったんだろうね・・・私、ちょっと後悔してたりしてね・・・そっか、ヴィンセントも行っちゃうのね、でも私大丈夫よ。心配しないでね。えへへ」
 目を赤くしながら無理に笑うルクレッツィアの前髪をヴィンセントはそっとかき上げた。
「安心しろ、今セフィロスを取り返してきてやる」
 今までに見せたことのないような優しい瞳でそう語りかけると、おもむろに彼は部屋を出ていった。ルクレッツィアはこの男と別れてしまったことを真剣に後悔していた。

「何だね。また、君かね。今度は何の用だ?」
「いい加減にしろ、宝条。どういうつもりなんだ。ルクレッツィアをいつまで放っておくつもりだ。彼女はもう限界だ。セフィロスを彼女に返してやれ」
「本当に、おせっかいだな、君は。そういうことは私たち夫婦の問題だから、君には関係ないと前にも言っただろう?ついでに言うとセフィロスは私の貴重なサンプルだ。君の仕事とも全く関係ない。あまり、首をつっこまないでもらいたいものだな」
「それが、私の任務とも関係あるのだがな、宝条・・・」
「何だと?」
「宝条、タークスの任務は社外の諜報活動だけだと思っていたか?実はそれだけではない。社内における陰謀や会社への背任行為を調べることも任務の一つであることを知らなかったか?」
 宝条の顔色が変わる。
「ジェノバプロジェクトの人体実験・・・これに関してはまだ会社は認めていない。それをよくもどうどうとやるもんだ・・・しかもジェノバが古代種ではないとわかっても続けるとは。大した度胸だな、宝条!」
「ふう・・・、さすがはタークス。コンピューターのハッキングもお手の物だな。参った。私の負けだ。で、何が望みだ」
「言ったはずだ。セフィロスを彼女に返せ!」
「わかった、わかりましたよ。言うとおりにしよう。セフィロスは彼女に返す。この実験も中止しよう。そうすれば、見逃してもらえるのだな?」
「そういうことだ」
 その時、ふっと緩んだヴィンセントの表情を宝条は見逃さなかった。

 ガーン!

 響く銃声。
 床や壁に赤い花が咲いた。
 腹に衝撃を感じたと思った瞬間、激痛がヴィンセントを襲う。
 思わず押さえた手に、赤い筋がみるみる幾筋も流れていく。
「ふふふ、油断したなヴァレンタイン。どうだ、銃とは無縁のど素人に風穴を開けられた感想は?」
「き・・きさまあ・・・」
 真っ赤に染まった両手がそろりと宝条の首にのびる。そして締め付ける。
「う、ぐ・・!」
 ガーン!
 2度目の銃声が響いた。
 宝条の首を絞めつけていた力がゆるみ、その場にヴィンセントは倒れ込んだ。
「はー、はー、なんて奴だ。まさか、2発も銃弾を使うことになるとは・・、おっとこうはしてられない」
 宝条が慌ててヴィンセントの身体を調べる。
「ふー、何とかまだ生きているな。死んでしまっては元も子もない。さすがはタークス、半端な生命力ではないな。これは上玉のサンプルになりそうだ。しかし、急がなければ。もたもたしているとせっかくのサンプルが台無しだ」
 独り言を言いながら宝条はヴィンセントのスーツを脱がせて、ネクタイとホルスターとシャツのボタンをはずし、手術台にかつぎあげた。小柄な宝条にとって、長身のヴィンセントをかつぎあげるのは重労働であった。しかし、何とか手術台に横たえて、彼を眺める。眼鏡の奥の瞳が冷たく光る。
「それにしても、お前はなんと美しいのだ。ルクレッツィアがいかれてしまうのも無理はないか・・・ふふふ・・・、だが、お前はもう私のものだ。これからお前は生まれ変わる。さらに美しくな・・ひひひ・・・・・」

 とその時、銃声を聞きつけたルクレッツィアがその部屋に駆け込んできた。
「・・・!」
 部屋の中央にヴィンセントは横たわっていた。顔面は蒼白。肌けたシャツから覗く彼の肌も血の気が失せて雪のように白い。それとは対照的に身につけているシャツは鮮やかな赤色に彩られていた。
「ヴィンセント!」
 彼女は彼のもとへ駆け寄った。
 彼は激しく肩で呼吸をしている。
 ルクレッツィアは彼の頬を撫で、首筋に手をあてがった。
 伝わってくる温もりは微かで、脈も弱々しい。彼女にはまるで彼の生命が刻々と流れ出ていくかのように感じられた。彼女の目から涙があふれる。
 ヴィンセントの眼がゆっくり開いた。しかし、その瞳はうつろだった。
「ヴィンセント!私よ!しっかりして!」
 反応は・・・ない。視線は虚しく宙を漂い、もはやルクレッツィアをとらえることができないようであった。苦しそうな息づかいだけ響く。
「タークスの名スナイパーも女が関わると無様なものだな」
 手術台のそばにたたずむ赤く染まった白衣を着た男の冷たい声が響く。
「あなたが撃ったのね!」
 目を赤く腫らしたルクレッツィアが声の主に対して激昂する。
「ああ、お節介が過ぎたようだからな。しかし、このまま死なせてしまうのはもったいない。そこでよい考えを思いついたのだ」
「何言ってるの?一体彼をどうするつもりなの!!」
「ふふふ、タークスといえば、強靱な精神と肉体を持っているはず。現に今そのすばらしい生命力に感動していたところだ。彼ならば、私の『新種』に耐えられるだろう」
 ルクレッツィアの顔が青ざめる。
「やめて!彼を巻き込まないで!!」
 ルクレッツィアの脳裏に宝条の「新種」の移植実験のレポートが浮かぶ。
 宝条は本職の研究の傍らで「新種」と名付けたオリジナルの細胞を開発し、こっそり人体実験を行っていた。彼の実験体となり、「新種」を植え付けられた者はすべて発狂したり、身体が耐えきれずに絶命している。
「安心しろ、ルクレッツィア。私は今までの結果をもとに仮説を立てたのだ。これまでは、すべて健常者に移植した。そして、激しい拒絶反応を起こして失敗した。そこでだ、被験体が瀕死の状態であると想定する。この場合、被験体は衰弱しているため、『新種』に対する拒絶反応が低下し、むしろ『新種』の力を借りて生き延びようとする。そして、うまく融合する。どうだ、すばらしいだろう。今まさに準備は整った。今度は必ず成功する」
作品名:FF7ヴィンセントのお話 作家名:絢翔