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FF7ヴィンセントのお話

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【5.罰】


 ヴィンセントは生死の狭間で未知の敵と戦っていた。何か得たいの知れない物が自分の身体に侵入してくるのを感じて、必死で抵抗していた。しかし、抵抗しようとすると全身が締め付けられ、熱い痛みが駆けめぐった。少しでも気がゆるむと容赦なく敵が侵入してくる。
 うなされながら身悶えるヴィンセントを横目に宝条はパソコンを操作しながらつぶやく。
「うーむ、手術は完璧だったのだが、予想以上に拒絶反応が激しいな・・・意識が残っている状態がいけなかったか・・・」
 そして、ヴィンセントに向かって叫ぶ。
「ヴァレンタイン! 抵抗はやめろ。抵抗すれば苦しいだけだ。素直に私のかわいい『新種』を受け入れろ!そうすれば、楽になれるぞ」
 一瞬、ヴィンセントの反抗的な視線が宝条を貫いたが、再びうなされる。
「ふん、聞こえているのかいないのか・・。ま、好きにするがいい。お前は私の『新種』には勝てないさ・・」
 ヴィンセントの意識はひたすら侵入者を拒み続けた。しかし、彼の身体は拒みきれずに屈してしまった。侵入者たちが身体中に広がっていくのが感じられる。彼の意識は奥底へと沈んでいった。
 ヴィンセントは昏睡状態に陥っていたが、彼の身体と融合した「新種」はその再生、増殖能力をいかんなく発揮し、新種細胞がみるみる彼の銃創をふさいだ。
 それをまともに見た宝条に満面の笑みが浮かぶ。
「ふふふ、定着したようだな、すばらしい。やはり私の仮説は正しかったのだ。よくやったな、ヴァレンタイン。お前の身体はもう回復したぞ。あとはお目覚めを待つばかりだ。楽しみにしているぞ」

 それからヴィンセントは7日間眠り続けた。
 意識が戻ったとき、彼は異様な興奮を覚えていた。まだ、思考はおぼろであるが、神経は研ぎ澄まされ、自らの鼓動の音が全身に響く。
 目を開けた彼はおもむろに手術台から足をおろし、床の上に立った。そして、次第に意識がはっきりするにつれ、彼は自分の身体の異変に気がつき始めた。
 まず、自分の手を見た。鋭い爪が伸びた毛むくじゃらの手を!
 思わず顔を背けた先に映っている異形の姿!
 人間とも獣とも思えないおどろおどろしい姿を彼はまともに見てしまった。
「うわああああーーー!」
 ヴィンセントは悲鳴を上げてその場にふさぎこんだ。
「おはよう、ようやく目が覚めたか。長い間待たせて悪い奴だ。もう起きないかと思って心配したよ。まだ、ちょっと中途半端な格好だが、なかなか美しい」
 ガラス越しに宝条が話しかける。どうやらヴィンセントはガラスケースのようなものに取り囲まれているようだ。
 半ば獣と化したヴィンセントの紅い瞳が宝条をにらみつける。
「貴様、俺に一体何をした!」
 今にも宝条に向かってとびかかりそうな勢いだ。
「ま、そう興奮するな。ただでさえ、恐ろしい格好なのだから、凄まなくても十分だよ。あ、それと、念のために言っておくがこれは強化ガラスだ。今のお前では壊せんよ。これから先はわからないがな。お前のおかげですばらしいデータが得られた。感謝するよ、ヴァレンタイン。だが、お前はまだ未完成だ。お前には本来のお前と私の植え付けた『新種』が共存している。お前が『新種』を制御するにはまだ時間を要する。私も最後までつきあってやりたいところだが、セフィロスを連れて本社に戻らなければならなくなった。隣の部屋におあつらえ向きの寝室を用意してやったよ。また、眠ることになるが、身体がなじんでくれば自分の意志で好きな形態に変態できるようになるさ。もっとも変態してしまえば、ただの戦闘マシーンと化してしまうがな・・。ま、たまには『新種』の好きなようにさせてやることだ。私も一度完全に変態した君を見たかったものだ。特にカオスの細胞を植え付けることができなくて残念だよ。ばかな女がもっていきやがったからな」
「女・・・、そうだ!ルクレッツィアはどうした!」
「さあな、お前とセフィロスを放り出してどこぞへ出ていきおった。どうせその辺でのたれ死んでいることだろう」
「貴様・・・」
「ふっ、眠るのがいやなら女の後でも追いかけるがよい。しかし、その格好で外を出回るのはお勧めしないがな・・・おっと、こんなところでのんびりしている時間はない。そろそろ失礼するよ」
「待て!宝条!」
「おやすみ、ヴァレンタイン。いい夢をな」
 そういって部屋を出ていくともう2度と戻ってこなかった。
 神羅屋敷にはヴィンセント1人が取り残された。
 しばらくしてガラスケースの扉が開いた。時限式に開くようになっていたようだ。
 ヴィンセントはまだおぼつかない足取りで部屋を出た。どうやらそこは地下の研究室であったようだ。洞窟のような廊下はかび臭くて湿っぽい。どこからか獣のような鳴き声や叫び声が聞こえる。動物実験に使われた獣たちなのだろうか?
 彼は何気なくすぐそばの部屋に入った。中央にぽつんと棺桶がおいてある。
「・・・、贖罪にはもってこいか・・・ルクレッツィア、君は今どこで何を考えている・・・君を止めることができなかったのが私の罪だったようだ。そしてこの罰を受け入れるしかないようだ。セフィロスを取り戻すことができなくて・・・すまなかった」
 ヴィンセントは棺桶のふたを開け、その中に身をすべらせた。
 中に横たわるとすぐに睡魔が降りてきた。自らの中でうごめく別の生命体のさざめきを感じながら彼は深い眠りに落ちていった。

作品名:FF7ヴィンセントのお話 作家名:絢翔