FF7ヴィンセントのお話
【6.目覚め】
耐え難い悪夢が途切れることなく続いた。それからどれくらいの時間が流れたのだろうか・・
人間の気配が近づいてくる。ふいに暗闇の世界が破られた。
「わー、きれーな人!ねえ、人が寝ているわよ!」
まず、うら若い少女の声がした。
どうやら、姿は人間に戻っているようだ。
ヴィンセントはけだるそうに身を起こした。
「私を悪夢から呼び起こすのは誰だ?」
そこにいた見知らぬ少年が口を開いた。
「俺たちはセフィロスを追ってこの屋敷に来た」
「・・・!セフィロスだと」
それから、セフィロスについて一部始終をクラウドというその少年から聞いた。彼は英雄であったこと、5年前の変貌のこと、そして再び現れて罪を犯し続けていること・・・
ヴィンセントはより一層の罪の意識にさいなまされていたが、贖罪のための悪夢を見ることをやめ、この一行についていくことにした。
一つは宝条に再び会える可能性があったためだが、それ以上になぜか行かなければいけないという使命感のようなものを感じたためであった。
ヴィンセントが初めてセフィロスの姿を見たのは南の島にひっそりとたたずむ古代神殿だった。
「私は星と1つになり、神となるのだ」
そう言い放ったセフィロスはまばゆい光を放ちながら壁画の間にたたずんでいた。
光輝き、天使が羽をひろげるかのようになびく銀髪と果てしなく深い紺碧の瞳、その顔には間違いなくルクレッツィアの面影が残っていた。
ヴィンセントはさらにセフィロスの中にもう1つの姿を垣間見たような気がした。紛れもない自分自身の姿を。そして感じた。自分と同じ遺伝子の共鳴を。
(セフィロス・・・・・・まさか?)
考える間もなく、セフィロスは立ち去り同時にレッドドラゴンが現れた。
やっとのことでこの強敵を倒したクラウドたちの行く先に今度はデモンズゲイトが待ちかまえる。残りの力を振り絞って一行は戦うが、あと一歩のところで倒せない。
「ひーもうしんどいぜー」
シドがため息をこぼす。
「ち、もう少しなのに・・・限界か・・・」
クラウドがあきらめかけたその時・・・
沈黙を守っていたヴィンセントの身体が光り出す。
ヴィンセントは自らを飲み込んでいく者に身を任せた。初めての変態。
長い黒髪が紅く変わっていく。
光の中から現れたのは一匹の獣、ガリアンビースト。
彼にあるのは闘争本能、目の前の敵を倒すことのみ。
真紅のたてがみを振り乱し、ガリアンビーストが敵を裂く。凄まじい破壊力。
ビーストフレアがデモンズゲイトを飲み込み、消し去った。
敵が消え去り、元の姿に戻ったヴィンセントが残されていた。まだ、息が弾んでいる。
「何だ、今のは?」
シドはくわえていた煙草を落としていた。
「・・・・・・」
一行に緊迫した空気が流れる。
エアリスの声が沈黙を破った。
「へえー、ヴィンセントってばすっごく強いんだー!」
亜麻色の髪の少女はヴィンセントの顔をのぞき込んでにっこり微笑んだ。
「な、なんだよーそんな隠し技持ってるんだったら早く出してくれりゃいいのに、水くさいぜ」
シドは新しい煙草に火をつけた。
「これからも、頼りにしてるぜ」とクラウド。
一行に穏やかな空気が戻った。
いつも明るくはしゃぎ、皆の雰囲気を盛り上げるエアリス。
そんなところがルクレッツィアに似ているとヴィンセントは思った。
しかし、しばらくしてその少女は姿を消した。
そして・・・
セフィロスの手によりそのうら若い生命は絶たれた。数日後のことであった。
もう誰もセフィロスを止めるはできなかった。
彼の本体は北の果てにあった。クラウドをも操り、メテオが発動される。彼を止めるただ1つの手段は彼を倒すことのみ。
ヴィンセントはいずれ彼を殺さなければならないことを運命として受け入れなければならなかった。
(私に倒せるのだろうか?ルクレッツィアの・・・そして私の・・・)
作品名:FF7ヴィンセントのお話 作家名:絢翔