りりなの midnight Circus
「そうか。エルンストは狙撃手。だけど、それはただ射撃に特化した能力ではなく、偵察の能力も意味する。それを最大限有効利用するためには、むしろエルンストは他とは離れて潜伏し独自に行動した方が良い。それだと、僕達ではなかなか対処できない不明驚異に対する対策にもなる。僕はいいと思います」
暫くそれを考え、独自にシミュレートしていたエリオンはベルディナの意見に賛成のようだった。
「あたしも、悪くない意見だと思うぜ、なのは」
ヴィータもベルディナの意見には一理あると感じたのだろう。
なのはは少しまた考えて、
「分かった。それも効力に入れておくね」
といって、朱鷺守とあとでまた打ち合わせをしようということでこの話を終わらせた。
なのはの意識がそろそろこちらに向かいつつあることを感じたベルディナは、
「シミュレーターを使うのは久しぶりなんでな、調子を思い出すために先に入ってる。準備が出来たら声をかけてくれ」
というと、なのはに先行してシミュレーターを開き中に身を滑り込ませた。
フィールド等の設定は、どうやら先程まで使用していたものを使うようだ。
中央のモニターに映し出されたビルの廃墟軍の中にベルディナの姿が映し出され、彼は軽く準備運動をするようにいろいろと身体を動かし、そこらを飛び回っていた。
しかし、エルンストは一つだけ疑問に思った。
「あいつ、武器を持っていないが、それでいいのか?」
彼の言うとおり、ベルディナはその手に自分たちと同じようなデバイスを持っていなかった。それが、ミッド・クラスターの標準なのかとレイリアに聞いたが、レイリアもそれに関しては分からないらしい。
「|僕達の世界(ミッド・クラスター)でも通常はバトル・ユニットというものを使用するよ。その機能も概念も、|そっちの世界(ミッド・チルダ)のデバイスと同じようなものだ。だけど、ベルディナ大導師がそれを持っているところは、見たことがないな。たぶん、見えないところで使っていると思うんだけど」
モニター内のベルディナは、一通りの準備を終えたようで、外の彼らに、「まだか?」といって手を振っていた。
なのはは慌てて、自分もシミュレータの筐体に入ると、その脇にデバイスを差し込み筐体を起動させた。
「さあ、始まるぜ。どっちが勝つか、賭けねぇか? ちなみに俺は、高町一尉に12だ」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪