りりなの midnight Circus
自分のわずか1メートル横を飛び去るその巨槍はそのまま一切の減衰も見せず、ただすべてを貫き飛翔する。
先陣を切った、出し惜しみせず自分のなせる全力を費やしたはずだった。それにもかかわらず、彼はよけず受けず、なおも反撃することでそのすべてを打ち抜いた。
しかし、なのはにはそれが悔しいとは思えなかった。
悔しいと思うこと自体が何か間違っているような気がしていた。むしろ、彼が出し惜しみせず彼自身も己の最高を発揮してくれたことに喜びさえも感じていた。
「私の、完敗です。ベルディナ大導師」
息を荒くし、額にかなりの汗を浮かべるベルディナに向かって、なのはは晴れやかな笑みを向けた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪