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りりなの midnight Circus

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 彼らの後方に立つ青年、この艦の参謀を務める秋月優一戦佐補はアークソルジャーのレーダー範囲から消えていくテンオを見つめてそう言った。
「艦長と秋月君の生まれ故郷、地球ですか。あの中にもあちら側の地球出身者も多くいたようですな。あれを見てどう思うことやら」
 サライトは15年前の事件を思う。
「とにかく、幸運を祈りましょう。私達に出来ることはそれだけです」
「だな。操舵士、進路をプラネタリエリア218号へ向けろ、通常航海任務に戻る。アークソルジャー発進」
 秋月は、操舵士にそう伝えると共にCIC(コンバット・インフォメーション・センター)に通信のやりとりを開始した。
 背後に広がる地球を含む宇宙に背を向け、その巨体は時空間の海をゆっくりとこぎ出していった。

***

 テンオが転移した場所は漆黒の闇を満点の星空が彩る空虚な空間だった。
「座標修正。天の川銀河太陽系第三惑星衛星近傍」
 地球出身者にとってそれはとてもなじみの深いものであった。
 装甲の開かれた窓の外には節くれだらけの表面を見せる月。今は太陽が裏へ隠れているためか、それは黒々とした様子を見せていた。
 そして、その向こう側に浮かび上がるひときわ大きなものがそこにあった。
「地球だ。こうやって見るのは初めてだな」
 それをいち早く目にした朱鷺守は、写真やテレビで見るそれとは格別の美しさを放つ生まれ故郷に感嘆の念を抱いた。
「私は、一度だけ。幼い頃仕事で見たことがあります」
 なのははそのときと全く様子を違えないその光景に安心を覚えた。
 あのときは友達を助けたい、これ以上の悲劇を防ぎたいという思いばかりでそれをゆっくりと堪能する暇はなかった。
 状況はあのときと同じ、いや状況だけなら今の方が悪いかもしれない。それでも、地球の青さに心を奪われることができる分、自分にも少し心の余裕ができたのかもしれない。
 なのははそう思っていた。
「地球へ降ります。大気圏を突入しなければなりませんので、かなりの揺れを覚悟していてください」
 カーティスはそう通信すると、さっきまで開いていた窓の装甲板を再び閉じ、その舳先を地球へと向けた。
「地球、A3297号世界主星か。いやな事件だったぜ」
 カーティスはそう独り言をつぶやくと、通常空間動力を起動させそのスロットルをゆっくりと押しやった。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪