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りりなの midnight Circus

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 足を打ち抜かれ、それが体から離れ空を飛び、彼は一瞬で意識を失った。
(賢い判断だ)
 とエルンストは思った。このような状況では、無様に声を荒げ自らの立ち位置をこれ以上さらすよりは素直に気絶した方がいい。
 しかし、それは味方に対して自分は無事かどうかを伝える手段を失ったと言うことだ。
 おそらく、残る二人は彼を死んだものとして扱うだろう。
 いや、連中に負傷者を救護する気概があるのかどうかは不明なところ、たとえ負傷して行動不能であることがわかったとしても彼に残された道は、見捨てられる運命のみだったのかもしれない。
 エルンストは雑念に扉を閉めると、巨木より背中を浮かせ、今度は自分が地を這う虫になる番だった。

 エルンストは敵を甘く見ていたことを思い知らされた。
 先ほどまで行動を同じにしていた残りの二人は、エルンストの射撃が終了した時点で散会し、片方はその場を監視し、もう片方は負傷したと思われる仲間の方へと向かっていく様子だった。
(負傷した仲間を回収しにきた方をしとめるか。それとも残った方をしとめるか)
 エルンストは一瞬迷った。
 しかし、前者は外道の所行だと判断し、すぐさま後者を選択する。
 外道、彼を知る人間が聞いたら何を今更とあざけるだろうが、それは彼にとって唯一持ち合わせる誇りでもあった。
(俺は殺人者ではあるが、殺人鬼ではない)
 絶対に無用な殺しは行わない。目的が達成されればそれ以上のことは行わない。それが、人を撃つ狙撃手のが持つ普遍的な誇りでもあった。
 敵はどこまで行けば撤退を開始するだろうか。すでに敵はその戦力の五〇パーセント失ったはずだった。一人は片腕を亡くし、もう一人は片足を亡くした。すでに戦える状態ではない。
 エルンストが彼らを殺さなかったのは、一つの理由がある。
 彼らを負傷に押さえておくことで、残りの二人の足を押さえるということだった。
 いや、もしも彼らは最初から五人のチームで、今は最初の者を救護するために一人が抜けている状態だったとしたら。
 ならば、後一人、やるか、やらないか。
 もしも、敵が五人いるのなら。最後の一人を生かしておく道理はない。
(さあ、どう出る)
 散会した二人のうち一人は、すでに足を吹き飛ばされた者のそばで応急処置をすませ、すでに撤退に入っている。
 このまま最後の一人がどう出るか。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪