りりなの midnight Circus
地面にたたきつけられたエルンストは肺の中だけとは言わず、腹からもすべての空気をはき出し、一瞬意識が飛びかけた。
「おっと、まだ気絶するには早いぜ」
立ち上がろうとするエルンストを捕まえて、その間接を決めた朱鷺守はそのナイフ【ナイトホーク】を彼ののど元に押し当てた。
「話はレイリアから聞いている。まあ、よくやったといいたいところだが」
朱鷺守は怒りを押し隠さず、さらに間接を締め上げナイフを首筋に深く押し当てようとする。
「一言ぐらい相談してくれてもいいんじゃないかしら? 私たちは、そ・ん・な・に、頼りにならないのかな?」
すっかり殺(や)る気を見せるなのはは、笑顔の上どころかまるで全身にブットイ青筋を立てている様子だ。
その手に持つ【レイジング・ハート】をすでにエクシードモードにしているところから、ひょっとすればエルンストを殺すつもりなのかもしれない。
「僕も、心配しました」
着陸後、その場に泣き崩れるアリシアの背をなでながらもエリオンは自身の双銃型デバイス【トムキャット】を構えその銃口をエルンストに向けていた。
「てめぇは、何でいつもいつも一人でやろうとすんだ! もっとあたしらを頼れ。仲間だろ!!」
ヴィータは城砦のごとく巨大な【グラーフ・アイゼン】を元の規模に戻し、エルンストのそばの地面をそれでたたきつけた。
そういえばレイリアの姿が見えないなと、周りを見回したエルンストだったが、その彼はすでに縁の側の植え込みで伸びきっているようだった。
エルンストは自分の運命を覚悟し、素直に気を失うこととした。
砂の入った頭陀袋のごとくぼろぼろになったレイリアとエルンストが、ようやく目を覚ました頃なのは達は客間でくつわを並べていた。
「先ほど、ベルディナ大導師より連絡がありました」
畳敷きの部屋のもっとも上座に座るレイリアは押し黙る皆の前で辞した。
言葉少なく述べられたそれを耳にするだけで、その場にいた全員がその意味を正確に理解できた。
「つまり、決戦ということか」
朱鷺守の静かな言葉は間違いなくその場に座る者達の心を乱した。
「いよいよってことね」
今まで後手に回り、ストレス全開でいらいらしていたアリシアもようやく訪れようとする鉄火場への期待に眼を輝かせた。
「そこで、僕から皆さんに、正確にはエルンスト以外の皆さんに提案があります」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪