りりなの midnight Circus
「それぐらいは容認できるんじゃない?」
「お前のデバイスならな。だが、俺の者ではコンマ12はでかすぎる。せめてコンマ02ほどにはしなくては話にならない」
「なるほどね、それが君の精密狙撃の秘密ってことか。とすると、他の機能はかなり割を食うことになるね」
「致し方のないことだ」
二人はしばらくそうして意見を交わしつつ、これからのデバイスはこうあるべきだとか、キハイル式の欠点はどうかとかの議論を展開していた。
「お二方。あと、20分ほどで時間ですので。準備をすませておいてください」
カーティスの言葉にレイリアとエルンストは議論をいったん止め、時計を見た。
「時間か」
エルンストは時計から目を上げ、周りを見回した。そこにいるのはレイリア、カーティス、自分。他にはいない。
「結局、身を引いてくれたってことかな。賢い判断だね」
レイリアはそういいつつも少し寂しそうに肩をすくめた。
「いや、そうでもないようだ」
無意識のうちに周囲の状況を把握していたエルンストは、山道を登る複数の気配に気がついていた。
「よう、そろそろ時間だな」
朱鷺守が木々の狭間から顔を見せた。その後ろには、双子のリーファとヴィータ。そして、朱鷺守七葉が立っていた。
「やあ、皆さんおそろいで。まさか、自殺願望者がこんなに多いとは思いませんでしたよ」
レイリアは喜びつつも憎まれ口は外さず彼らを迎え入れた。
「自殺願望と言うよりは、心中願望者といった方がいいな」
「ああ、なるほど。君は上手いこと言うね。言い直すよ」
エルンストの提案にレイリアは手を打ち、エヘンとのどを鳴らすと、馬鹿みたいに爽やかな笑みを浮かべ、朱鷺守達に向かって言い放った。
「まさか、心中願望者がこんなに多いとは思わなかったよ。君たち、よっぽど気が狂っているようだね。病院に行った方がいいと思うよ」
というレイリアに、ヴィータは「やかましい!!」と言って【グラーフ・アイゼン】で彼の頭を殴り飛ばした。
エルンストは、やれやれとため息をつくと、デバイス調整器の電源を落とし【クリミナル・エア】につながれたケーブルを無造作に外した。
「調整はうまくいった?」
そんな彼にアリシアが声をかけ、彼の持つデバイスをのぞき込んだ。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪