りりなの midnight Circus
「まあ、まあといったところだ。本当なら、もう少ししっかりとした設備で行いたかったが。一回の戦闘程度なら問題なく超えられるだろう」
「そう、よかった」
すっかり棘のとれたアリシアはそういうとにっこりと微笑んだ。
「お前の姉貴、ずいぶん可愛らしくなっちまったな」
朱鷺守はエリオンにそっと耳打ちし、エリオンもそれに頷いた。
「ところで、高町一尉はどうした? いないようだが」
エルンストはヴィータの側に彼女がいないことを知り、なのはの居場所を尋ねた。
「あたしは一緒に来てない」
ヴィータはそういうと屋敷への道を見つめた。
「そうか」
エルンストの寂しそうな表情にアリシアは少しなのはを嫉妬するが、自分も同じ感情を抱いていることに何も言えなかった。
「こないかもしれませんね」
後5分と迫った時間にエリオンはそうつぶやいた。
「仕方ないね。みんな、乗り込んでください。出発します」
レイリアは、それに見切りをつけ全員をテンオへと誘った。
「まあ、仕方ねぇよ。特に高町一尉は残してきたものも多い。正しい判断だと俺はおもう」
誰よりも先行してテンオへ乗り込んだ朱鷺守に誘われるようにみんな重し足取りでそれに続く。
「皆さん、お気をつけて。お兄様、七葉はお兄様のご武運をお祈りいたします。どうか、ご無事で」
七葉は去っていく皆の顔を一人ずつ確かめ、深く頭を垂れた。
最後に全員の乗船を確認したエルンストは最後に朱鷺守の屋敷を一瞥し、首を振ってそれを振り解くと自分も素早くテンオに乗り込んだ。
「それでは、離陸します。シートベルトを締めておとなしくしていてください」
カーティスはそういって、テンオのエンジンを点火させた。
テンオは、身を包み込むネットを自力で引きちぎるとそのままゆっくりと上空へその身を躍らせた。
「これより少ししたら、時空連合の回収艇がここに来るから。高町一尉はそれで回収されることになるね」
次第に小さくなる朱鷺守の屋敷を見下ろしながら、レイリアは小さく彼女に別れを告げた。
エルンストもそれを見下ろし、そして、にやっと笑った。
「カーティス。後方のハッチを開け」
エルンストは、レイリアの通信機を奪い取ると急いでカーティスにそれを命じた。
「えっと、そろそろ加速を開始しますので、危険です」
「いいから早くしろ。最後の客がお出ましだ。」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪