りりなの midnight Circus
最後の客、と聞いて皆窓から外を見下ろした。
さっきまで沈黙を守っていた朱鷺守の屋敷。しかし、そこから白い軌跡を伴い上昇してくるものがあった。
「おい、急げ。早くハッチを開くんだ」
朱鷺守もそう叫び、シートベルトをパージすると後方の格納庫へ続く扉を押し開けてそこに身を躍らせた。
「まったくなのはのやつ。主人公は最後に現れるっても、ちっとは場合を考えろっての」
ヴィータは憎まれ口を叩きながらも頬を緩ませ、狭いテンオの船内で赤いドレスのスカートを翻し朱鷺守を追った。
「ごめんなさい。眠っちゃってて、遅れた」
開かれたハッチから吹き出される風に髪を靡かせて、なのはは荒い息に肩を上下させてそこに立っていた。
「ようこそ、高町一尉。飽くなき闘争への道を選んだあなたを歓迎しよう」
エルンストは、柄にもなく恭しい手つきで彼女を迎え入れた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪