りりなの midnight Circus
ヴィータはどうすんだ? レイリアを見た。彼女の姿は、なのはの姿とは違い、薄手の白いワンピースを上から着ているだけで、その見た目ではむしろなのはの方がやんちゃな少女のようにも見える。
「それでは、潜入ですか?」
エリオンは特に表情を変えずに確かめた。
「まあ、それしかないかもね」
アリシアも偵察に疲れたのか、いすに座ってぐったりとしていた。
双子のリーファは特に代わり映えのない私服で、エリオンは無地のTシャツに半ズボン、アリシアは薄手のブラウスにフワッとしたミニスカートと、その姿は一般人の中に完全にとけ込んでしまっている。
「進入経路はどうなる」
ここにきても相変わらず黒いスーツ姿を崩さない朱鷺守はその中では明らかに浮いてしまっているが、その雰囲気から彼にちょっかいをかける者は居なく、今では女性陣のボディーガードのように街を歩いている。
「一つだけ見つけた。要塞と山の継ぎ目。そこに小さいが人の通れる程度のひび割れを見つけた。何処につながっているかは不明だが、罠である可能性もある」
グレーを基調とした都市迷彩を心がけるエルンストの姿は、さすがというべきか街の雰囲気に完全にとけ込めるような姿だった。
何の特徴もなく、街角ですれ違ったとしてもどこかであったことがあるなという程度で誰の印象にも残らない。
下手に趣味に走らないその姿は彼のまじめさを感じることができる。
「どうする? レイリア。お前の判断だ」
レイリアは少しの間逡巡して思いを張り巡らせた。自分たちの目的、そのためのもっとも効率のよい用兵。そして、自分の目的を果たすためにはどうすればよいか。
思案するレイリアを皆は黙って見守った。この判断がその後をすべて決める、その重要な決断をレイリアに委託することに誰も疑問を感じていなかった。
そして、レイリアはゆっくりとまぶたを開き、面を上げ、宣言した。
「潜入班と陽動班に分けます。潜入班は先ほどエルンストが言った経路を使用し内部へ。陽動班は外でガジェットの殲滅を行います。潜入班は速やかにガジェットのコントロールを破壊し、その後陽動班は内部へ進行。事態の掌握を行います」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪