りりなの midnight Circus
友人となった男の晩餐に呼ばれ、その家に爆薬を仕掛けたこともあった。
まさに外道とレイリアは自分の行いを自嘲する。
「やっぱり君には気づかれるか」
「ああ。初めてあったときから、お前からは俺と同じ臭いがした。多くの命を踏み台にし、その血を浴び続けてきた者の臭いだ」
「そっか。そこまで気がつかれているんなら、もう話してしまってもいいかな」
レイリアはそういうと、椅子から立ち上がり給湯器のスイッチを入れお茶を入れた。
「お前の真意をか?」
エルンストはレイリアからマグカップを受け取り彼の話に耳を傾けた
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「ようやくあたしも暴れられるってことだな」
街から遠く離れた場所にある広く切り開かれた荒野の中でヴィータは【グラーフ・アイゼン】を杖についてそう口にした。
「そうだね。やっと私たちも戦えるんだね」
白いバリアジャケットに身を包みながら、なのはも【レイジング・ハート】を下ろし、一息ついた。
今ではうち捨てられた鉱山の跡地。所々に放置されたまま何十年もそこにある建物らしき残骸などが並ぶその場所は今ではなのは達の訓練場になってしまっている。
要塞からもかなりの距離があり、街からも遠い。誰の目にもとまらないその場所はまさに彼らにとって絶好の訓練場に違いなかった。
そして、二人もまた明日に控えた決戦のため最終調整を終えたところだ。
「だけど。結局明日も、エルンスト君は一人なんだね」
なのははバリアジャケットを解放し普段着に戻ると側の岩に腰を下ろした。
「だな」
ヴィータもデバイスを首飾りに戻し、なのはの隣であぐらをかいた。
都会の喧噪も虫の音も獣の声も響かないその場所を照らすのは、幾億の星々と夜空を彩る三つの月。
光害のない夜空には大気によって瞬く星空が一面に広がっている。
「やっぱりここにいたか、二人とも」
鉱山の広場の周りに広がる森の木々の裏側から朱鷺守が顔を出した。
「朱鷺守一尉。あなたも訓練ですか?」
なのははそういって立ち上がり彼を迎えた。
「まあ、そんなところだな。二人に混ぜてもらおうかと思っていたんだが、少し遅かったようだ」
朱鷺守はそういって笑うと、その場に腰を下ろした。
ヴィータはそんな彼の体からアルコールの臭いが漂ってきていることに気がつき、少し眉をひそめた。
「朱鷺守、お前。飲んできただろう」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪