りりなの midnight Circus
朱鷺守は、煙草を吸う仕草でため息をはき出すと、側に寄ってきたガジェットを一掃しそのまま姿を消した。
そして、彼が姿を示した先で戦闘を繰り広げる彼女たちはいきなり自身達の周りにのさばっていたガジェット達が一瞬でくず鉄に変化したことに目を見張った。
「朱鷺守一尉」
なのはは力強い増援に声を上げた。
「お二方の獲物を奪ってしまい申し訳なかったな」
それは先ほどレイリアに奪われたことに対する腹いせだったのだろうか。それに対してヴィータは、不満そうな表情を浮かべるが、獲物となるガジェットはまだまだ大量にいることを見、【グラーフ・アイゼン】の巨体を振り回す。
彼女の小さな体を起点として、それはまさに嵐のような回転を始めそれに群がるガジェットをことごとく打ち砕いていく。
「俺も、負けられないな。Extrem Hurricane!!」
再び神速の嵐が吹き荒れた。
「アクセルシュート。行って!」
『Yes,master』
薔薇色の粒子が収束し、彼女の周囲に広がり幾重もの結晶を形作る。それらはなのはの意志に忠実に従い、飛翔し彼らの周囲を埋めるガジェットの一翼に襲いかかる。
その一つ一つに込められた魔力、それを見て朱鷺守は改めて彼女の身に込められた魔力の絶大さを実感した。
「さすがはAce Of Ace。魔力量は時空世界随一か」
「朱鷺守、後ろだ!」
なのはの攻撃に目を取られた朱鷺守は背後、左右、正面、上下にガジェットの侵入を許した。
魔力行使の直後に硬直するなのは、敵を捌くことに手一杯のヴィータではそれをフォローすることができない。
敵の一斉射撃、光に満たされる朱鷺守。
「Illusion Air」
その爆風の先にあるものは、多くの姿を持つ朱鷺守。
「幻術? だけど魔力は感じない」
なのはは再び魔力をチャージしながらそれに目を見張った。
幻術により自らの姿多く見せる術は、彼女にとって初めてではなかった。現在執務官としてそのキャリアを積み上げるティアナ・ランスターもその幻術の使い手だったが、彼のものはそれとはまた違って見える。
ガジェットもその姿に幻惑され、その攻撃を停止させる。
「Escape Air」
朱鷺守達はそれを呟き、自ら生み出した幻術の数だけの攻撃を重ねる。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪