りりなの midnight Circus
まだ誰も落とされていない。エルンストはそれを確認すると、腰のポーチから一掴みほどの大きさのものを取り出しその先端を捻った。
「お休み(Good night)」
エルンストはそうつぶやくとそれを通気口の隙間から部屋へと落とし、自身は身を潜めた。
チャリンという音と共にそれは部屋の中央の床にはね、それと共に莫大なエネルギーをはじき出した。
熱と衝撃、四散する破片をまき散らし、そこにいた者達はそれにあおられるように吹き飛び、エルンストはその部屋へと降り立った。
「き、貴様は……」
体を吹き飛ばされ息絶え絶えに身を横たえるそれに、エルンストは小型銃(ハンドガン)を突きつけ、
「あんたには恨みはない。だが、任務のためだ。死んでくれ」
といってその引き金を引いた。
部屋の中に動くものが居なくなったことを確認し、エルンストはその中央のコンソールに向き合うと、【ストライク・ビューワー】とそのシステムを連結させその内部へと侵入する。
「ガジェット停止。基地防衛システム休止。システムパスワードロック」
その瞬間、システムのモニターに映る無数の光点が一気に停止した。
「任務完了。次のステージに移行する」
エルンストはそう呟き、来た道とは違う通気口を通ってその部屋を後にした。
数分後、ガジェットの停止を受けてコントロールルームに駆け込んだ警備兵とシステムエンジニアだったが、そのシステムがきわめて堅固なロックがかけられていることを発見し、基地に何者かの侵入があったことを初めて知ることとなった。
ガジェットの停止を受け、レイリア達はエルンストの任務の成功を確信し、彼らも作戦の第二段階(セカンド・ステージ)への移行を開始した。
そして、ガジェット共に基地の防空システムとその防壁がまとめてダウンしたところになのはがたたき込んだ大規模砲撃に基地に大穴が穿たれることとなる。
レイリアを中心とした陽動班はそのまま基地制圧隊として敵本拠地へと堂々たる凱旋を果たした。
彼らの侵入を許した基地全域は、非常警戒態勢が敷かれ先行した侵入者への対策は後に回されることとなった。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪