りりなの midnight Circus
それほど、基地制圧隊の攻撃は熾烈で、既に用済みとなったガジェットの復活が絶望視される中戦場へとかり出された魔道警備隊は彼らの進行を止めることはできず、彼らの進む道の後ろには気を失う彼らの姿が累々と積み上げられるばかりだった。
なのははエルンストとの合流を提案したが、このままの勢いを止めたくない朱鷺守は彼との合流を後回しにしてそのままの進行を提案する。
そしてレイリアは朱鷺守の提案を採用し、ただその中央へと駆け上がる。
後はその首謀者、この要塞の主を追い詰めるだけであった。
レイリアは広い広間の中心に立ち、ようやくこの時がやってきたと、敵魔導師立ちを排除し終えた彼らに目を向けた。
「どうしたの? レイリア」
【レイジング・ハート】をおろしたなのはは、流石に体に襲いかかる疲労に額の汗をぬぐった。
「ようやく排除し終わったか。結構、優秀な奴らを雇ってやがったな」
朱鷺守も同様にその疲労を隠せない様子だった。体の節々に襲いかかる痛覚(ノイズ)を無視しきれず、彼は膝をついた。
「朱鷺守一尉。少し無茶をしすぎです」
エリオンはそんな彼をいたわるように、その背中をなでた。
「だけど、あたしもいい加減疲れたわ。あと少しだって思いたいけど」
アリシアは【ストライクイーグル】を今だけセットオフさせ、その場に崩れ落ちるように座り込んだ。
「あたしはまだまだいけるぞ。さあ、次は何処だ?」
ヴィータはまだまだ猛る戦意を奮い立たせ、【グラーフ・アイゼン】を肩に背負いレイリアに視線を移した。
なのは、朱鷺守、ヴィータ、双子のリーファの視線を受け、レイリアはどこか寂しそうな笑みを浮かべ、そしてその言葉を紡ぎ出した。
「次はありません。これでお終いです」
レイリアはそういって指を鳴らした。それはすべての終局を伝える指鳴りとして広い空間に響き渡った。
エルンストはその一部始終を少し高い場所、彼らの立つ位置では影となりその姿を伺うことのできない位置で見ていた。
レイリアの指鳴りは彼の耳にも届けられ、それと同時にレイリアの眼前にたたずむ彼らはその床から伸びる光の束縛の元にひれ伏すこととなった。
「どういうつもりだ……。レイリア」
朱鷺守の声。怒りを秘めながらもそれをあらわにしない、重く響き渡る声。
「レイリア、あんた何を……」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪