りりなの midnight Circus
「だけどあいつだけは許せないのよ! 絶対にぶった押して謝らせてやるんだから」
アリシアは枯渇しつつある魔力を、ベルカのカートリッジで何とか増幅しその側を飛来するガジェットを一体ずつ殲滅していく。
しかし、その状況は圧倒的に不利であるに違いない。それを俯瞰するエルンストの目にも彼らの身の振りには精彩がかけていると感じていた。
そして、エルンストは前日、レイリアと最後に交わした言葉を思い出していた。
『君にお願いがあるといった方がいいかな』
それは誰にも気がつかれてはならない、レイリアの覚悟と真意がいったい何処にあるのかを示す言葉だった。
そして、彼はそれに了承した。
エルンストは【クリミナル・エア】を構え直し、【ストライク・ビューワー】をのぞき込んだ。
その先に移るレイリアの行動は、流石に多くのガジェットと戦闘機人を操るためなのか普段とは違い、自ら積極的に動かずその場に立ち止まり射撃支援を行っているだけだった。
エルンストはついにこの時がきたと自覚し、その照準を彼の額へと会わせた。
(弾道予測)
その言葉を忠実に守り、【ストライク・ビューワー】は目標となる距離と周囲の環境をすぐさま処理し、その正しい弾頭軌跡を彼に与えた。
「レイリア。お前は、間違いなく信頼に値する人間だった」
【ストライク・ビューワー】の先に移る彼の面がエルンストへ向けられた。その表情はどこか、安心したような笑みに包まれているように感じられた。
そして、彼はその引き金を引いた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪