りりなの midnight Circus
第二十七話 闇に戻り者
そうして事件は解決した。レイリアはエルンストの射撃を受けその身を朱に染め上げ、その命を散らした。
彼は、その命の終わりに何を見たのだろうか。エルンストは感じていた、あれはおそらくすべてをやり遂げた者の安らかで誇らしい最後だったと。
レイリアの死と同時に停止したガジェットと戦闘機人はその後のなのは達の攻撃で完全に機能を停止し、それを見届けていた南雲もまた、エルンストの放った一撃の下でその活動を停止していた。
突然に収束したその事態を見つめ、ただ呆然とそこに横たわる二体の亡骸を目にして何の行動も起こすことのできない彼らのもとへ降り立ったエルンストは、レイリアが背負ってきたもの。自分自身に託したものを語った。
レイリアの覚悟。それは、今こうしてこうあることだった。
エルンストはあの夜に聞かされた言葉を、彼の遺言ともとれるその言葉を一字一句違えることなく口にした。
レイリアは、南雲によってその命を質に取られていた。故にレイリアは確かに今まで南雲の利益のために行動し、エルンスト達機動中隊の面々をこうして罠へと誘い込んだことは確かなことだ。
しかし、レイリアはその立場さえも利用し、最終的に確実に南雲をしとめるタイミングをエルンストへと提供したのだ。
「あいつは最初からすべてを裏切っていた。俺たちも、南雲も」
そう、レイリアの切り札とは裏切りであり、その立場を有効利用することだった。
「殺すことはなかったじゃないの。あんたは、それだけ知っていたのに、レイリアを殺したっていうの?」
アリシアは歯を食いしばり、手のひらを握りしめ、自分自身を消耗品として活用したレイリアの亡骸をただ見つめていた。
「あいつの命は、もう既になくなっていた。あいつは、俺に頼んだ。自分を殺してくれと」
俺はただ、その望みをかなえただけだと言い放つエルンストは、その表情を一切変えることなく、自らの感情を一塊のマシンへと変貌させた。
「それが、こいつの覚悟だったって訳か。結局、自分の命を持ってすべてをやり遂げた。まったく、お前達は何処まで潔いのか。これだけのものを見せられては、自分自身の決意の甘さを突きつけられたような感触だ」
自らの羽織るコートをレイリアの亡骸に送り、朱鷺守はまるで死んでいった彼に敬意を表するように深く頭を垂れた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪