りりなの midnight Circus
なのはは突然咳き込みうずくまり、咳き込む朱鷺守に驚き彼に肩を貸した。
「ここで限界が来るとは。今回は少しはしゃぎすぎたか」
口の端に鮮血を浮かべながら、朱鷺守は力なくなのはの肩に体重を預ける。
「どうやら、コントロールルームには俺一人で行くことになりそうだな」
エルンストの呟きにアリシアは異を唱えるが、エルンストはそれを拒否した。
「何でよ?」
アリシアは勢いよくエルンストに飛びかかろうとするが、その勢いも急激に抜け去る力の前に崩れ去ることとなる。
「あ、れ? 何で?」
がたがたと震える体を両手で抱えながらアリシアは呆然とその状況を見下ろした。
「アリスも限界なんだよ。そもそも僕達の体はそれほど長時間の魔力運用には適していないんだ」
アリシアほど急激な魔力運用をしたわけではないエリオンは彼女に比べれば幾分ましにも見えるが、それでもそのうちに潜む疲労と障害は無視できるほどではないようだった。
「決まりだな。高町一尉は朱鷺守一尉を。エリオンはアリシアをそれぞれつれて脱出。安全地帯へと誘導する。そして、残った俺は制御室へ。ヴィータ二尉は動力室を頼んでもいいか?」
ヴィータは満身創痍の自分たちを見回して、静かに頷いた。
「ちい、悔しいがお前の言うとおりだな。俺たちがここにいれば足手まといになる」
朱鷺守はこみ上げる吐血をこらえ、足を踏ん張った。
「エルンスト。絶対帰ってきてよ。待ってるからね」
震える声で言うアリシアにエルンストは頷きを返した。
「それでは、高町一尉、朱鷺守一尉、リーファ姉弟。後ほど」
エルンストは最後に彼らに最敬礼を送り、そして立ち去る。広間の隅の壁に最後に残された爆薬をセットしそれに火をつけた。
爆発と共に大穴が穿たれ、その先には巨大なメインシャフトの巨抗が姿を見せる。
「なあ、エルンスト。昨日の晩、酒場のポーカーで大もうけしてな。今夜はそれで飲み明かそうぜ。未成年とか酒が飲めねぇとかなしにして、一晩騒ぎ明かそうぜ」
朱鷺守の残した言葉にエルンストは肩をすくめて返した。まったく、決戦の前夜にこのものはいったい何をいていたのか。だが、それも悪くないと思ってエルンストは、「実は俺も酒は好きだ」と言って返した。
エルンストは、風が吹き上がるその巨抗を見下ろした。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪