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りりなの midnight Circus

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 そして、その熱が意識に根を張っていくと同時に、彼の心は次第に穏やかになっていくようだった。
 そして、彼は唐突に理解した、その死に行く刹那の間彼の体中を光の速さよりも高速でその情報は駆け抜けていく。結局自分も生にしがみつく臆病な人間だったのだと。
『ああ、そうか。だから命というものは尊いのか。高町一尉、あなたの言うことが正しかった。俺はただそれから逃げていただけだった。だが、同時に俺は自分の命であなたたちが助かることを嬉しく思う』
 薄れ行く意識。この世界の全ての謎が解明されたかのような歓喜に身体が震える。既に手足の感覚はない、痛いとも熱いとも辛いとも、悲しいとも。白い闇に沈むに連れそういった感情がまるで熱に溶かされていくように霧散し、残るものは単純な歓喜の歌だけだった。
 そして、その最後に残った彼女の笑顔を思い出し、何故自分はあれほどまでに彼女を気にしていたのか。その謎が今解き明かされた。
(あなた達が無事なら、俺はこの命に意味を見いだすことができる。それが、俺の生き様だったと思わせてほしい)
 愛しい彼女の笑みを、まるで子守歌のような声を浮かべ、今はただ眠りにつこう。まるで揺りかごのような穏やかな闇に包まれて。
 爆発と閃光は全てをなぎ払い、大規模な崩落を引き起こし。静寂だけが残された。

作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪