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りりなの midnight Circus

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「今となってしまっては、これを拒否する権利は俺にはないだろう。だが、この大事な時期に優秀な人材を失うことは時空世界の損害になるとおもわんか?」
 しかし、なのはは首を振り、ゆっくりと口を開いた。
「それは、あなた方の損害であり利益でしょう? 私は彼らのような生き方をすることはできません。私にその覚悟はありません」
 ベルディナは彼女のその覚悟を思い知り、ただ「そうか」と言ってその辞表を受け取った。
「それと、これもお返しします」
 なのはは赤色の宝石を取り出し、彼の前に置いた。
 それは、なのはの持つデバイス【レイジング・ハート】のように見えたが、それは違った。
「これは?」
 ベルディナの問いになのはは答える。
「エルンスト君が持っていたものです。壊れて動きませんが、彼の生きてきた証です。受け取ってください」
「……いいだろう……」
 ベルディナはそれを受け取り、なのはの提出した辞表の上に置いた。
「最後に何か聞いておきたいことはあるか? 本来なら機密事項にふれることだが、君には特別に答えよう」
「聞きたいことはありません。しかし、教えていただけるのなら一つだけ。あなたの目的は何ですか? どうしてあなたはこの道を?」
「理由か。今となっては遠い昔のことだ。ただ、俺はあのときこの時空世界の平穏を夢見ていた。そして、それが果たせるのならすべてを犠牲にする覚悟をした。ただそれだけのことだよ」
「そうやって犠牲を積み上げ、あなたは何を得たのですか?」
「さあな、失ったものが多すぎて、俺は何を得たかったのか分からなくなった。それでも果たされることがあり、守られるものがあるならそれでもいいと思っていた」
 なのはは彼がレイリアとエルンストの言うことと同じことを口にしたことに少なからず嫌悪感を抱いたが、彼が積み上げてきた年月と失ってきたものの数を思うとたまらなく悲しくなってしまう。
 そして、なのはは実感した。この人もまた、自分が消耗品として最後を迎えることを願っていると。
「行きます」
 なのははそういってきびすを返した。
「さようなら、高町なのは。君は間違いなく優秀な魔導師だった」
 ベルディナの言葉を最後に扉が閉められ、部屋に静寂が戻った。
 ベルディナは紅茶のカップを取り、一息ついた。そして、机の上にのせられた赤い宝石に目をやった。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪