りりなの midnight Circus
昼食時からは少しだけ外れていたためか、そこに並ぶものは片手で数えられる程度でエルンストも、さんざん悩んだあげくに日替わり定食にした後発の二人も難なく食事を手にし、ヴィータが元々座っていた席に落ち着いた。
「ところでなのは。午後からの訓練、デバイス使ってすんだろ? あたしも参加するからな」
と、食事を取りつつ暫く談笑をしていた二人(エルンストはその輪に加わらず、一人黙々と食事を口にしていた)は、午後からの訓練の事を話題にしていた。
エルンストは、食後の水を口にしながらそれに耳を傾けた。
ヴィータも訓練教官としてチームを率いているというらしいが、その彼女も午後からの訓練にはなのはと合流するらしい。どうやら、なのはのチームとヴィータのチームとの合同訓練になるらしいとエルンストはそれまでの会話から推測した。
「うん、ちゃんと聞いてるから大丈夫だよ。だけど、どうしようね。エルンスト君は来たばかりだから、今日は見学にしておこうか?」
なのはそういってエルンストの表情を伺うが、エルンストは正直冗談じゃないと思った。
「いえ、俺の能力を見定めていただく必要がありますので、出来れば参加したいと考えます。高町一尉」
訓練教官とは訓練生と殆ど実戦に近い模擬戦闘を行うこともある。訓練のレベルが向上すると、そちらの方が頻度が高くなるため、補佐とはいえ訓練官に任命されたエルンストは可及的速やかに彼女たちに自分の運用方式を決定してもらわなければならない。
「そうだねぇ。ちなみに、エルンスト君のデバイスはどんなの?」
なのははエルンストの首にかけられた赤い宝石のようなものに目を向けた。それは、なのはが首に提げているものと同じような様相をしてたため、なのはそれがエルンストが持つデバイスだと当たりをつけたようだ。
エルンストはその宝石を手にすると、首から下ろし、少し力を入れて握りしめた。
僅かな光の明滅に、なのはとヴィータは目を背ける。そして、その光のあとに残されたものは双眼鏡の形をしたものだった。
「監視用デバイス【コールド・アイズ】です」
それは一見しただけで戦闘用デバイスではないと分かるものだった。
なのはは少し興味深そうにそのデバイスに目を向けるが、ヴィータはすぐに興味を失った様子で食後の牛乳を口にしていた。
「戦闘用のデバイスじゃないんだ」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪