りりなの midnight Circus
なのははとりあえず、4人に集合の号令をかけると少し苦々しい表情を浮かべ、訓練場をあとにした。
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結果を言う必要もないな。とエルンストは集合した4人の表情をみてそう感じた。特に最初に撃墜されたエルトの落ち込み具合は、激しかった。
エルンストは、なのはの指示で先程の戦闘の評価と各個人の優劣を口にした。
「確かに個々人の技能は最低限問題ないレベルだ。しかし、それが統合されてどうして戦力が落ちる。特にエルト、お前はリーダーとしてチームを率いる立場にあるにもかかわらずお前が最初に狼狽してどうする。いかに絶望的な戦況かでも常に冷静に周囲を観察し、適正かつ的確な指示を部下に与えなければならない。そして、他のものはどうしてエルトを的確にサポートしない」
おそらく、なのははここまで厳しく指摘しないだろう。彼女なら良いところをほめつつ、欠点をやんわりとながら的確に指摘することで訓練生のモチベーションを高める方法をとるだろうが、エルンストにはそれは出来なかった。
それもそのはず。エルンストは今まで教官としての訓練を受けたことはないのだから。
なのはとヴィータはエルンストの後ろに立ち、彼の行く末を見守った。
「なあ、なのは。いいのか? あれで」
ヴィータはなのはを横目で見ながらささやいた。
「うん。今は見守ろう」
二人にはエルンストの指導方法には問題があると感じていたが、彼の口から出される事項の全てはまるで彼らと同じ戦場にいたかのような精細さがあった。
実際、なのはとヴィータがモニターしていた情報以上の情報を彼は掴んでおり、どういうわけか訓練生達が個々人で行っていた念話の内容さえも掴んでいるような雰囲気さえももつ。
あれが、【コールド・アイズ】の能力なのか、となのはは思うが、情報収集にのみ重きを置かれたそれだけでは不可能なことだとも感じていた。
「高町一尉。一通りの評価は終わりましたが」
物思いに沈みかけたなのははそういって自分を見るエルンストに気がつき、すぐに笑顔を浮かべて入れ替わるように訓練生に向き合った。
「はい、では今のカーネル一士の指示をしっかりと頭に置いてもう一度だね」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪