りりなの midnight Circus
そんななのはの言葉に訓練生はあからさまに苦い顔を浮かべた。しかし、不満を言うものは誰一人いないことにヴィータは「少しは成長したか」とつぶやき、なのはの指示でさっきと同じ配置へと戻った。
エルンストは飛行適正がそれほど高くないので、ヴィータのサポートをしてもらう形でビルの頂上へと足を下ろした。
「さてと」
なのはは再びモニターを空中に出し、それを操作しようとしてエルンストのほうを向いた。
「ねえ、エルンスト君。今度の目標の配置は君がやってくれないかな」
なのはは先程の戦闘で最後にエルンストが操作したガジェットの配置を見て、彼ならどういう風な訓練を行うのか少し興味がわいたようだ。
エルンストは頷いて、
「ガジェットの配置と機能は自分が設定しても良いと言うことですか?」
と確認した。
なのはは、
「うん、そうだね」
と端的にそういうと、自分のモニターをエルンストの方へと受け渡した。
「連中では15分持たないかも知れませんよ。俺は容赦がないですから」
「少しは加減してね。それに、次の模擬戦の判断材料になると思うから、あまり無茶な要求はしない方が良いと思うよ」
「それもそうですね」
エルンストはそう答えると、モニターの光点に映る訓練生を中心にして、合計4体のガジェットを配置した。
「それだけで良いのかよ」
ヴィータは、4体じゃ少なすぎだろうと思いエルンストを問いただした。確かに、先程の戦闘で出されたガジェットは合計15体。エルンストが操作した最後の4体以外はことごとく撃墜されていたので、それがたったの4体だけでは訓練にならないのではないかと考えるのは当たり前のことだ。
「おそらく4体ぐらいなら何とかなるでしょう」
エルンストは少しだけ論点をずらして答えた。おそらく二人は、エルンストが訓練生を甘く見すぎていると感じているはずだ。しかし、4体ぐらいというのは訓練生にとってではない。むしろ、自分にとってのことだった。
エルンストの脳裏には少しだけ二人を驚かせてやろうという思惑が渦巻いていた。
訓練生を注進して扇状に配置されたガジェットのセッティングが終了した。
エルンストはなのは達の表情を見、二人は頷いた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪