二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

りりなの midnight Circus

INDEX|43ページ/187ページ|

次のページ前のページ
 

 一週間もの間眠りについていた【クリミナル・エア】は久しく起き上がった感触にとまどったのか、状況把握のため自主的に【ストライク・ビューワー】と回線を繋ぎ、情報収集を開始した。
《状況把握終了。使用者エルンスト・カーネルを確認。現状にて待機》
 【クリミナル・エア】から送られてくる音声にならないメッセージにエルンストはそれをゆっくりと撫でた。
(デバイスは良い。人間と違い、こいつ等は俺を裏切らない)
 まるで彼は親友と会話を交わすかのように【クリミナル・エア】に現状報告をさせた。
《現状、遠距離精密狙撃状態。二四時間以上調整されていないため可及的速やかな対処を要求。その他各部に損傷無し》
「よし」
 そう呟き、エルンストはゆっくりとそれを構え、銃床を肩に押しつけ、前床に二脚(バイポッド)を表出させると、射撃サポートのために設えられた台の上にそれを下ろした。
 グリップを握りしめる右手と肩に押しつけられた銃床をサポートする左腕はその肘の部分を顎にしたに置き、同時に中空の右手を保持するべくそれを下から押し上げた。
 そのすべてはまるで、【クリミナル・エア】が自分の身体の一部になる感覚だった。この状態をとった時強く思う、自分は人間ではなく【クリミナル・エア】の発射システムの一部なのだ、と。
(弾頭予測)
 【ストライク・ビューワー】の高性能照準器はそれに呼応し、最初のターゲット。およそ500m離れたブルズアイ静標的をセンターに構え、【クリミナル・エア】からもたらされた情報と、その側に立てられた【コールド・アイズ】がリアルタイムで取得する周囲の環境の情報とをリンクさせ瞬時に情報処理を終えた。
 指示から0.1秒も経たないうちにその赤色の奇跡は、エルンストが覗き込むレティクルを上下に貫くように表示され、それは刻々と状況の変化を物語るように左右に揺らぐ。
 人間の感覚では読み取れない微弱な風の揺らぎがあるようだ。500m程度であればその範囲は弾頭の予測できないばらつきの範囲内に十分納まっているが、これが2000mを超えるとそれも無視できなくなるだろう。
 コリオリの力も考慮に入れなければならない距離ではあるが、それはこの惑星の自転が変化しないかぎり大した揺らぎは確認できない。問題は惑星の歳差運動による揺らぎだが、それも大した誤差にはならない。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪