りりなの midnight Circus
「クリミナル・エアとストライク・ビューワーだったよね。それとコールド・アイズ。すごいね、全部で三つのデバイスを自在に操るなんて」
なのはその事実に驚きを隠せなかった。魔導師は一つのデバイスを使用するという何らかの固定概念が彼女にはあった。しかし、彼はそれをものの見事にあっさりと打ち砕いてくれたのだ。
ある意味痛快だなとなのはは思い、自分にもそういう方向は考えられるかと思い至りそれ以上考えるのを止めることとした。
エルンストが行ったデバイスの同時並列使用は、デバイスの処理能力を主眼に置かれたキハイル式デバイスシステムであるからこそ可能であり、なのはやヴィータが使用している既存のデバイスシステムではとうてい使用者の処理が追いつかないことだった。
それになのはは、自分自身の頼れるパートナー【レイジング・ハートEX】があればそれで十分だと考えていた。
しかし、せっかく保管庫から自分自身のデバイスを持ち出してきた二人だったが、これではすっかり出るタイミングを失ってしまった。
エルンストはあの調子では当分の間射撃場から立ち去りそうではないし、休憩の合間を見計らって声をかけても察しの良い彼のことだ、そのタイミングを影で見計らっていたことにすぐに気がつくだろう。
せっかく集中して訓練をしている彼を邪魔するのは忍びない。そう考えたなのははヴィータの肩を叩き、静かにそこから立ち去ることとした。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪